アニメーションビジネスの仕組み(7) 製作委員会のお金の流れ(2) | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

前に、製作委員会にメンバーとして入るには、ビジネス上および法令上の理由によりお金だけ出す形は認められず、自らビジネスを行うことが求められると書いた(アニメーションビジネスの仕組み(5) を参照)。

 

ビジネス上の理由というのは、個々のメンバーから見ると、通常、出資金の全額の回収ができないからである。文献によると50%回収できれば良い方だそうだ。では、なぜそれでも製作委員会に参加するかというと、個々のメンバーは、二次利用によって生じる製作委員会からの分配金のほかに、自己利用によって収益を得るので、トータルで黒字化し得るからである。

   

前回に書いたとおり作品には一次利用と二次利用があり、ビジネスとして重要なのは二次利用である。

 

一次利用においては、製作委員会に収入が入る場合と、入らない場合がある。収入が入る場合でも、許諾料を一括払いする形となる。

   

二次利用においては、製作委員会各メンバーの自己利用から生じた収益は、それぞれの取り分(「窓口手数料」という)を差し引いた残額を製作委員会に上納し、これを製作委員会の共有財産としていったんプールする(幹事会社が管理する)。プールされた資金は出資比率に従って定期的に各メンバーに分配される、というのが製作委員会方式の典型的なお金の流れだ。ただしこれは幹事一括分配方式と言うそうで、それ以外の方式がないということではない。

   

便宜上「自己利用」と書いたが、そもそも製作委員会というのはライセンシーの集まりである。権利者はあくまで製作委員会なので、個々のメンバーは製作委員会から作品の二次利用について許諾を受ける関係にある。製作委員会契約と別に自己利用のためのライセンス契約を作成するわけではないが、この関係は「仮想ライセンス」とも呼ばれている。

 

であるから、上記の製作委員会に上納するお金というのは、作品の二次利用に対する許諾料と位置付けることができる。製作委員会が組合であることに着目すれば追加出資金としての性格も有すると言える。この記事では分かりやすく「上納」と書いたけれども、上納とか上納金とは一般には言わないようである。

   

メンバーを窓口として、製作委員会外の第三者がライセンシーとして二次利用を行うことがある。この場合、製作委員会から第三者に許諾するのか、窓口メンバーから許諾(サブライセンス)するのか。ライセンス契約に署名するのが幹事会社か窓口メンバーか、許諾料の支払先が製作委員会の口座か窓口メンバーの口座かということだが、法形式としてはどちらも可能と思われるので、予め製作委員会契約で定める必要がある。