アニメーションビジネスの仕組み(4) 製作委員会方式の意義と歴史 | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 製作委員会方式は日本独自のビジネスモデルであり、その最大の目的は出資者のリスクの分散である。


 何のことかというと、コンテンツビジネスは当たるか外れるか、出してみるまで分からないという宿命がある。実写映画の話であるが、以前に、映画を20本作れば1本くらいヒットするという前提で、知的財産権の信託という仕組みの映画ファンドが作られたことがあった(岩崎明彦「「フラガール」を支えた映画ファンドのスゴい仕組み」(角川SCC新書 2007年)が、うまくいかなかったようだ。


 確率論はあてにならない。とは言え、3億円を1作品に投資するより、3000万円ずつ10作品に投資した方がリスクを分散できるのはたしか。意思決定が合議制である*(ゆえに意思決定が遅い)という難点があるので、資金力のあるアメリカのエンタメ企業から見ると製作委員会方式は意味が分からないようだが、日本ではこれが主流である。

 

*法律上はメンバー(組合員)頭数(出資比率ではなく)の過半数で意思決定する(民法670条1項)のが原則であるが、全員一致制にすることもでき(670条4項)、実務上は全員一致制とすることが多いようである。


 製作委員会方式は実写映画で始まった(角川映画)。アニメーションでは1980年代の劇場用アニメ「風の谷のナウシカ」および「AKIRA」が後のひな型になったという。1996年に「新世紀エヴァンゲリオン」が深夜に再放送されたのが深夜テレビアニメの起源であり、同作品のヒットによって、深夜テレビアニメ+製作委員会方式という現在のビジネスモデルが確立したとされる。


 製作委員会の組成、お金の流れなどについては次回以降に書きたい。