アニメーションビジネスの仕組み(3) 2つのビジネスモデル | 知財弁護士の本棚

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企業法務を専門とする弁護士です(登録30年目)。特に、知的財産法と国際取引法(英文契約書)を得意としています。

ルネス総合法律事務所 弁護士 木村耕太郎

 アニメを作るのは大変にお金がかかる。制作会社に支払う制作費だけで、30分アニメ1話分で1500万円から3000万円くらい、1クール(10話から13話)で約2億円から3億円くらいかかる(ただし子供向けアニメは1話1000万円くらいから)。


 ここ2,3年でさらに相場が上がっているという話も聞く。元々スタジオやアニメーターが足りないうえ、新聞報道されているように、最近はネットフリックスや中国資本がスタジオや人材を囲い込み始めている影響もあるのだろう。


 さらに、テレビ局に支払う番組提供料や広告宣伝費などもかかるので、1クールの制作費そのものは2億円くらいでも、必要な資金は全体で3億円くらいかかる。


 日本のアニメーションビジネスはテレビアニメがメインであるため、テレビアニメを前提として説明すると、日本のアニメーション製作には、主として、以前からのビジネスモデルである広告収入方式と、現在の主流である製作委員会方式とがある。


 これ以外のビジネスモデルがないというわけではなく、例えば東京地裁平成15年1月20日判決(超時空要塞マクロス事件)を見ると、どちらでもない複雑なスキームとなっており、過渡期には試行錯誤がなされていたことがうかがえる。


 広告収入方式は、一般のバラエティ番組などと同じ番組製作の方式である。簡単に言うと、以下のような仕組みである。

①テレビ局が、スポンサー(玩具メーカーなど)から広告料(スポンサー料)を集める。②テレビ局は、広告収入の中から自己の取り分を電波料、番組提供料などの名目で控除したうえで、制作会社に制作費を支払う。③制作会社は作品を制作するとともに、作品に対する著作権を有する(その結果として、スポンサーである玩具メーカーからはライセンス料を取る)。


 実際には、スポンサーとテレビ局の間に広告代理店が入るなど、もう少し複雑である。このビジネスモデルは、現在でも、キッズ・ファミリー向けアニメでは使われている。


 広告収入方式においては、テレビ局が制作会社に支払う「制作費」は、スタジオが実際に要する制作費よりも少ない額であることが商慣習となっており、制作会社は、二次利用によって生じるライセンス料収入を得て初めて収支が合うという。(アメリカではチップ収入が得られる職業はその分を見込んで賃金が安いという話を思い出す。)


 これに対して、現在わが国で主流のビジネスモデルは製作委員会方式である。


 製作委員会方式は簡単に言うと、以下のような仕組みである。

①製作委員会を組成し、幹事会社はメンバーから出資を集める。②製作委員会は、テレビ局に対して番組提供料(枠代、媒体費などともいう)を支払う。③製作委員会は、制作会社に作品づくりを委託し、制作費を支払う。④制作会社は作品を制作する。⑤製作委員会は著作権を有するとともに、各メンバー企業がそれぞれの分野で役割(窓口権という)を有し、それぞれのビジネスを行う。


 両方式の大きな違いは、(1)スポンサー企業から広告料の名目で資金を集めるか、製作委員会メンバーから出資の名目で資金を集めるか、(2)作品に対する権利(著作権)を有するのが制作会社か製作委員会か、などである。


製作委員会方式の詳しい説明は次回に。