サッカー審判TIPS(772) 主審に当たったボール | サッカー審判KenKenのブログ

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サッカー3級審判KenKenの審判経験記

少し遅くなりましたが、先日(日本時間2024年4月20日00:30KO)のU-23日本代表vs韓国代表の試合でのこと。

日本代表のエンドでの韓国代表フリーキック。

ゴール前に放り込んでくるかと思って日本代表選手は皆が壁の裏側をケアしていたところ、裏をかかれて壁の右方向にグラウンダーのパス。

このボールが主審の右足(インステップかインサイドか?)に当たり、壁の右側一番外にいた韓国選手に渡ろうかというナイスパスになった。

主審もFKは壁の裏に蹴られると思い、前の方に走って移動していたところにちょうどボールが来て当たったということだ。

 

シニアの皆様が現役の頃は、「審判はグランド上の石と同じだ。当たって方向が変わってもそのままプレーを続ける」と理解していたはずだ。

テレビで昔の試合の映像を見ていたら、コーナーキックだったかクロスだったかが、ファーサイドにいた主審に当たり攻撃側選手の目の前に転がりそれをシュートしてゴールインとなった場面が放送されていた。

たまたまピッチ上の石に当たって攻撃側選手の前にボールが来たのだから何の反則もないわけで、得点が認められた。

 

今の競技規則の第9条には以下のように書かれている。

ボールが審判員に触れ、競技のフィールド内にあり、次のようになった場合、
・ チームが大きなチャンスとなる攻撃を始める。または、
・ ボールが直接ゴールに入る。または、
・ ボールを保持するチームが替わる。
こうしたすべてのケースでは、プレーは、ドロップボールによって再開される。

①審判員と書いてあるので主審に限らない

②競技のフィールド内にあり、ということは審判に当たってラインを割った場合は別

③大きなチャンスとなる攻撃を始める、とは今回の韓国チームのケース。主審のナイスパスで壁の右外にいた韓国選手にボールが渡ってしまった。

④もし今回の主審のパスを日本の選手がカットしていたらボールを保持するチームが変わったということでやはりドロップボールとなるだろう。

 

さて、ではドロップボールの再開は双方の競技者を1人ずつ呼んで間にボールを落として取り合いをさせるのだろうか。

これもシニアの皆様にはそんな理解になるだろう。(私もだ)

 

しかしここで競技規則の第8条第2項を見てみよう。

…主審は、ボールが最後に競技者、外的要因または審判員(第9 条1 項に示される)に触れた位置で、最後にボールに触れたチームの競技者の1 人にボールをドロップする。

先ほどの韓国戦ならば、主審が触れた地点で(その後どちらのチームが保持したかにかかわらず)韓国チームにドロップすることになる。

主審がもっとペナルティエリアに近い位置で触れてくれていたらたいへんなことになっていただろう。

そしてそんな場合にさらに追い打ちをかけるのは上記条文の次の文章。

( 両チームの)他のすべての競技者は、ボールがインプレーになるまで少なくとも4m(4.5 ヤード)ボールから離れていなければならない。

 

9.15mほどは離れる必要はないが、4m離れなければならないこと、主審として距離をコントロールしてからドロップしなければならないこと、など少しばかり面倒だ。

試合中に滅多に起きない珍しい場面において、再開方法についてこれだけ気を付けなければならないとは競技規則も奥が深い。