サッカー審判TIPS(756) 相手チームから水をもらう
2023年10月1日(日)、杭州でのアジア大会男子サッカーの試合が行われた。
準々決勝、日本代表の相手は北朝鮮代表。
スタジアムは北朝鮮を応援する中国人多数。(北朝鮮人ではなく中国人が応援しているとわかるのは、中国語でガンバレ(加油)と叫んでいる声が聞こえたからだ)
処理水の海洋放出をしている日本はけしからん、その日本を懲らしめるために北朝鮮を応援しよう、ということなのだろう。
さて、ニュースでも報じられたのでご存じのとおり、ありえない暴力事件が起きた。
日本選手が倒れ、ドクターがピッチに入る。一緒に水を入れたコンテナも持ち込まれ、選手たちが一斉に給水を行う。
給水を行いながら選手たちが話し合っている。
そこへ北朝鮮の選手が寄ってきてさも当たり前のように、まるで自チームのボトルであるかのように水を取ろうとした。
給水係が「え?」というような顔をして引っ込めようとすると突然粗暴になり無理やり取り上げようとして小競り合いになった。
へぇ~、相手チームから平気で水をもらうんだ、と思ってその勇気というか無頓着ぶりに感心して見ていたが、暴力はまずい。
案の定すぐにイエローカードが提示された。
倒れている日本選手のところに主審もいたわけで、傍若無人に水に手を出してくる北朝鮮の選手を見て「対立が起きるのではないか」と監視していたのかもしれない。
Jリーグの試合などで、持ち込まれた水を相手選手や主審に渡して分けてあげる場面などはたまに見かける。
もともと顔見知りの選手だったり、のどが渇いているのはお互い様という気持ちがあるからそういう行為が行われるのだ。
しかしアジア大会の決勝トーナメントだ。しかもラフプレーされてピリピリしている相手チームの水を平気で飲みに来るというのは理解に苦しむ。
いろいろな解釈があるかもしれないが、例えば日本語のわかる北朝鮮選手がいて、そいつが「日本チームはどんな話し合いをしているのだろう」と聞き耳をたてに寄って行ったのかもしれない。
まあ本来は北朝鮮の給水担当が水を持って選手のところに駆けつけるべきであるが、給水担当がそこまで気が回らなかったのではないかというのが実のところかもしれない。