サッカー審判TIPS(743) ペッパーミル・パフォーマンスに思う
選抜高校野球の熱戦が続いている。2023年3月18日の試合で東北高校の選手が相手内野手の
エラーで出塁した際にペッパーミルパフォーマンスで喜びを表した。その行為を塁審に注意された
ため、大臣のツィッタ―も含めて様々な意見が飛び交いちょっとした騒ぎになっている。
パフォーマンスに賛同する意見は、「試合を楽しみたい選手を制限するのはおかしい」、「制限は
ブラック校則を想起させる」、「反対するのは時代錯誤」というもの。
反対する意見には「エラーで出塁したのだから相手に対するリスペクトに欠ける」という論調が多い。
さて、サッカーではどうだろう。相手のエラー(パスミス、クリアミス等)で得点になることは
日常茶飯事。相手DFのクリアミスを拾ってシュート。決まれば喜びのパフォーマンス。
クリアミスがオウンゴールになったとしてもチーム総出で喜ぶことも普通。
相手のエラーで得たチャンスを喜ぶのはリスペクトに欠けるという発想はサッカーにはない。
ピンチとチャンスが目まぐるしく入れ替わるスポーツだからだだろう。
なのでサッカーと野球を同列に論ずることはできない。
サッカーには得点時にパフォーマンスを行うことは普通に行われ、過度でない限り認められている。
ゴールパフォーマンスはさまざまなパターンがあり、一人でやるもの、数人でやるもの
(サンフレッチェ広島が頻繁にやっていた)など、極端な時間の浪費や相手や相手サポーター
を侮辱するものやサッカーに関係ないメッセージ(政治的なとか)を発するものでなければ
許容範囲は広がってきたと思う。
ゴール後のC.ロナウドの仁王立ちやK.エムバペのパフォーマンスなどは真似したい選手
は多かろう。
一方、相手へのリスペクトというのは共通する。サッカーでも反スポーツ的行為の中には
侮辱的なパフォーマンスを行うことが含まれ、警告・退場の対象となる。
サッカーでは喜びの表現は許されても常識の範囲内でやれよと理解されている。野球でも
大量リードしているチームが攻撃場面で送りバントをしたらブーイングを浴びるという不文律
があるらしい。
私が主審をしていた中で、パフォーマンスを理由に注意をしたことはなかった。
が、注意をすべきだったと後から思ったパフォーマンスがあった。
過去のブログ(612)にも書いたが高校野球のニュースで思い出した。
2015年のラグビーW杯で五郎丸歩がコンバージョンキックやペナルティキックを蹴る前の
ルーティーンのポーズ、両手を合わせて人差し指を立てゴールを見るポーズ。これが話題に
なった時期があった。
少年サッカー(6年生)の試合で、フリーキックを蹴る前にこのポーズをやった選手がいた。
その時は「ああ、ラグビーの五郎丸ポーズを真似しているな」と思っただけだったが、後から
「警告すべきだったかも」と思った。
理由は「サッカーに対するリスペクトに欠ける」というもの。あのポーズでフリーキックを狙う
必然性がない、
ウケ狙いだけであり、そのポーズをすることがプレーに関係すると考えにくいからだ。
もし本人にそのつもり(リスペクトをしない)がなく、狙ったところにキックするためにそのような
ポーズを取ることが自分のルーティーンであるならば許される行為だと思われるが、明らかに
そうではなかった。
主審がそのように判断したので警告、という措置はアリだと今でも思っている。
で、最初に戻ってペッパーミル・パフォーマンスをどう思うかだが、ふざけてやっているものでは
ないのであればスルーしてもよいのではと思う。