サッカー審判TIPS(739) アクセサリー | サッカー審判KenKenのブログ

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サッカー3級審判KenKenの審判経験記

サッカーやラグビーのようなコンタクトスポーツではアクセサリー(指輪、リストバンド類、ネック

レス、イヤリング)は相手競技者や自分を傷つける原因になるため競技規則で装着が禁止

されている。

また寒い時期にはネックウォーマーを使いたくなるところだがこれも試合中は外すべき対象だ。

接触プレー時に腕輪も含めて用具と体の間に相手競技者の指などが偶発的に入る可能性が

あり、双方に危険だからである。

 

指輪くらいはいいだろう、とか結婚指輪は簡単には抜けないから勘弁して、という声は以前は

よく聞かれた。

しかしルールの浸透とともに、最近では試合前の用具チェック時にはちゃんとはずしてきている

選手がほとんどである。(シニアリーグでの話ですが)

試合中はグラブを着けるのが通常であるゴールキーパーでさえ指輪はNGだ。

(グラブや手袋のように試合中に外すことができるものは外した状態での事前チェックだ)

 

カタールワールドカップ決勝トーナメント1回戦フランスvsポーランドの前半41分過ぎ、フランスの

⑤クンデ選手がポーランド陣内右サイドでスローインをしようとした時のこと。

副審がクンデ選手に何か話しかけている。

まさにボールを投げ入れようとしているときに何を会話しているのだろうと見ていたら、なんと

クンデ選手がネックレスをはずそうとし始めたではないか。

そして一人ではうまくできないのでベンチから出てきたコーチが首の後ろをごにょごにょやって

ようやくネックレスが外せた。

その間プレーは中断されて皆が待っていたのだが(当然アディショナルタイムの加算対象だろう)、

一人の用具修正のために試合再開を待たせているというのは問題ないのだろうか。競技規則では

どうなっているのか気になったので見てみた。(なお、画像はABEMAさんから拝借しました。)

 

競技規則第4条にこう記述がある。

すべての装身具(ネックレス、指輪、ブレスレット、イヤリング、皮革でできたバンド、ゴムで

 できたバンドなど)は禁止されており、外さなければならない。装身具をテープ覆うことは、

 認められない。

  (中略)

 用具を正していなければ、プレーが停止したときに(フィールドから)離れる。

 用具を正す、または取り替えるために競技のフィールドを離れた競技者は:

  審判員に用具を点検させてから、復帰を認められる。

  主審の承認を受けて初めて競技のフィールドに復帰できる(承認はプレーが進行中でも行うこと

  ができる)。」

 

これによると、クンデ選手は一旦フィールドから離れてネックレスをはずし、その後主審に承認を

得てから復帰するという手順を踏むべきことになる。

しかしこの競技規則を読むだけでは、用具修正のために競技者がフィールドを離れたあとに主審と

してはすぐに(復帰を待たずに)プレーを再開していいのかどうかわからない。

ただ、「承認はプレーが進行中でも…」という文言があることから、プレーを再開しても問題はない

のだろう。

 

現実的には、ただ指輪を外すだけなどの単純な動作の場合はフィールド内で自分で外し、ベンチ前で

タッチライン越しにスタッフに渡すとか、もしベンチと反対側のタッチライン側ならば、ハーフタイ

ムに拾ってからベンチに戻る前提でラインの外に放り投げておくなどすれば、主審も装身具を外した

ことを確認できるのでピッチから出させる必要はないと思う。

そして、時間がかかるようであれば一旦フィールドから離れさせ試合を再開させて、後から試合に

参加させるという処置になるのではないか、と解釈する。

 

今回のクンデ選手はネックレスを外すのにけっこう手間取って、そこそこの時間(30秒ほどだっ

た)がかかった。主審は彼を一旦外に出してもよかったのではないかと思う。

(戻るまでの間、フランス代表は一人少なくなるが、競技規則に違反した状態でプレーしていたの

 だからその代償ということで受け入れなければならないだろう)

 

ワールドカップという大舞台での試合前の用具チェックがけっこういい加減だという事実は衝撃だ。