サッカー審判TIPS(118)
旗の見落とし
試合中に「オフサイド」と旗が上がったが主審が気がつかずプレーが流れてしまうことがある。
そうすると、例えばこんなことになる。
オフサイドラインぎりぎりから飛び出した選手がボールをコントロール。追いすがるディフェンダーをかわし、逆サイドから駆け上がる味方にパス。ところがパスの精度が悪く、トラップに手間取っているうちに守備側が追いつく。これをかわすのに、寄ってきた味方とワンツーパス。
これが見事に決まり、GKと1対1になった選手がうまくフェイントで抜いて無人のゴールに流し込む。
見事なゴールで「ゴールイン」の笛を吹こうとしたが、「おっと、最近はゴールインの笛は不要なんだった」と気づき、「ゴール」と宣言することにした。
念のためコーナーフラッグあたりにいる(はずの)副審に目をやる。
あれ?
副審がいない。
急いでタッチライン沿いに目をやると、ハーフウェーラインから10mほどのところで旗を上げている副審がいた。
これはカッコワルイこと甚だしい。
主審が旗を見落としていたというチョンボであるだけでなく、見落としたために続いたプレーでゴールになってしまったのだから。
審判団の連携の悪さも露呈してしまった。
このような場合、副審がどのように行動するか事前の打ち合わせで決めておくことが望ましい。
私は、前線にパスが出た場合はプレーを追うことはもちろんだが、副審を必ず見るようにしている。
副審もこちらとアイコンタクトしたり、右手を前方に出して「プレーオン」を示していたりしてくれる。
(フラッグは左手に持っているはずだ)
そう心がけていても見落とすことが絶対に無いとは言えない。
私の場合、試合前の打ち合わせで副審に以下のように言っている。
「もし、私がオフサイドの旗を見落としてプレーが流れた場合は2プレー3プレーくらいまではそのままそこで旗を上げていてください。すぐにゴールに至らずプレーが継続している場合は、旗を降ろしてプレーを追ってください。」
「ただし、流れたプレーがすぐゴールに結びついた場合にはそこに立っていてください。私が確認に行きます。」
人によってはこう言う方もいる。
「どれだけプレーが流れようと、得点になろうとずっと旗を上げ続けていてください」
いろいろなご意見もあろう。
たとえどれだけ時間が経過したとしても、反則は反則としてその場所に舞い戻って処置をすることがルールに則っているというのは正論。
私は、プレーが3つ4つ流れたらもう次のステージへ移ったとみなしてプレイバックしない方が自然だと思っている。5つも6つも前のプレーにロールバックするのはちょっとばかり間が抜けてしまう。
副審がオフサイドの旗を上げてずっと立ち続けるよりも、新しい場面で反則やオフサイドが発生しないか監視するためにボールを追った方が現実的だ。
ただし、実際には旗が上がったら守備側のチームやベンチから「オフサイド!」とか声がかかるので気づく場合がほとんどだ。
※昨年12月23日の試合で、ハーフタイムにベンチに下がった私は後半観戦中に主審がオフサイドの旗を見落とした場面で大声で「旗が上がってるぞー」と怒鳴り、それで主審が気づいて笛が吹かれたということがあった。
なにはともあれ事前の打ち合わせは重要なのである。