サッカー審判TIPS(112)
監視位置(2)
かつて主審をしたときのこと。
攻撃側のスルーパスにFWが追いつくことができずボールがゴールラインに向かって流れた。
ゴールキーパーがキャッチするだろうなと思って見ていると、ボールはペナルティエリアの縦のラインぎりぎりに沿って転がっている。
「このシチュエーションにピンときた」私は、急いでペナルティエリアの縦の線の延長線上まで移動して
ゴールキーパーのキャッチングを監視した。
果たして予想通り。
このゴールキーパーはあまり上手でなかったのでやってくれました。
自分の体はペナルティエリアの中にいて、エリアの外をゴールライン方向に転がっていくボールを手でつかんだ。つかんだ時はボールはペナルティエリアのラインにかかっていなかった。
これはエリアの縦の線の延長線上で見ていないとわからない。副審の位置からではエリア外のボールを
つかんだのか、エリアのラインにかかっているボールをつかんだのか判定が困難だ。
即座に「ハンドリング」の反則で笛を吹く。
このとき、守備側の選手達はいっせいに「セーフだ」とか「ハンドじゃない」とアピールをする。
しかし、主審の位置を見て抗議を諦める。
ラインの延長線上にいてハンドリングを確認したと自信を持って笛を吹いているのだから、その主審の
位置よりも悪い条件から見ている守備側の選手達のアピールが正当性を持つわけがない。
もしセンターサークル付近にいてこのキャッチングの場面を見たとしよう。
ハンドかもしれない!と思って笛を口に持っていく。しかし本当にハンドだったのか今ひとつ自信がない。そうこうするうちにプレーが続き笛を吹くタイミングを逸する。仕方なく笛を口から離す。
「おしゃぶりじゃねーぞ」と観客席から野次が飛ぶ。
ボールを追いかけたFWはもちろん主審より良い位置でプレーを見ている。
「ハンドだろーがー。そんな位置で見えるのかよー」と怒鳴る。
となってしまう。
この状況でキモになったのは、次のプレーを予測して良い位置へすばやく動けたこと。
試合の最初から最後までこれを意識することは疲れるが、できるだけ心がけよう。
監視位置については、主審と副審の協力による2次元の監視が大切だということも言える。
例えばオフサイドの反則
前後の位置は副審の旗で示す。左右の大まかな位置は副審の旗の角度でわかるが正確な位置は前方から
主審が手で示してやる。
例えばゴールキック
ボールを置いたときにゴールエリアにかかっているか。
横からは副審が監視、前からは主審が監視し、確実にゴールエリアにボールがかかっていることを確認
数学の用語で言えば、X-Y座標平面上でX軸とY軸の座標を主審と副審が示すことによってボールの位置がただ一通りに決まるようなものだ。
さて、冒頭のゴールキーパー君。どうすればよかったのでしょうか。
答え:転がってくるボールを一旦足でトラップし、ペナルティエリアにドリブルして持ち込んでから
拾い上げればよかったのです。
もちろん、味方からのパスは足で受けてからであっても手で拾い上げることはできません。
拾い上げた場所から攻撃側の間接フリーキックになります。