788冊目 地下鉄道/コルソン・ホワイトヘッド | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「地下鉄道」コルソン・ホワイトヘッド著・・・★★★☆

コーラはランドル農園の奴隷だ。身よりはなく、仲間たちからは孤立し、主人は残虐きわまりない。ある日、新入りの奴隷に誘われ、彼女は逃亡しようと決意する。農園を抜け出し、暗い沼地を渡り、地下を疾走する列車に乗って、自由な北部へ…。しかし、そのあとを悪名高い奴隷狩り人リッジウェイが追っていた!歴史的事実を類まれな想像力で再構成し織り上げられた長篇小説。世界を圧倒した奴隷少女の逃亡譚。

 

第8回(2017)Twitter文学賞海外部門1位の作品。

 

紹介文の通り、本作はアメリカ南部(ジョージア)の奴隷少女・コーラの逃亡と、それを命がけで手助けした人々vs奴隷狩り人たちとのストーリーである。

本作の地下鉄道とは奴隷たちをアメリカ北部に逃す為の列車の事で、実際にそんな列車があったのか?と思い「地下鉄道」をググッてみた。

 

”地下鉄道(ちかてつどう、英: Underground Railroad)は、19世紀アメリカの黒人奴隷たちが、奴隷制が認められていた南部諸州から、奴隷制の廃止されていた北部諸州、ときにはカナダまで亡命することを手助けした奴隷制廃止論者や北部諸州の市民たちの組織。また、その逃亡路を指すこともある。地下鉄組織(ちかてつそしき)とも呼ばれる。
最も頻繁に使用されていた1810年から1850年の間に、30,000人から 100,000人が地下鉄道の助けを借りて奴隷状態から逃れたと推測されているが、公式の国勢調査ではその数は6,000人ほどと計上されている。地下鉄道は一般に「自由」を称揚する価値観の象徴的な存在となっており、同国の黒人(アフリカ系アメリカ人)史においても特筆される事項である。

この逃亡幇助網は、物理的に地面の下に設置されていた訳ではなく、「(地下に)潜る、隠れる」といった「秘密」やアンダーグラウンドを表す意味で「地下鉄道」と呼ばれていた。”

 

と言う事で、地下鉄道とは隠語で、訳者あとがきによれば著者は子どもの頃、地下の鉄道を信じ比喩と知ったときは落胆したそうである。

とは言え、奴隷制に反対し逃亡を手助けした組織は実際にあった。

 

では、アメリカに於ける奴隷制度の歴史とはなんだったのか?

調べてみたが、ここで長々と説明するのも面倒なので大雑把に要約すると、、、

 

黒人vs白人

奴隷制度肯定派vs奴隷制度反対派

綿花栽培を主とした農業vs工業

アメリカ南部vsアメリカ北部

 

という図式で、これが南北戦争に発展していく。

多くの奴隷は大規模農家に買われ(奴隷は売買されていた)農業に従事したようで、本作でも奴隷たちが綿花の摘み取りや玉蜀黍(トウモロコシ)の収穫に駆り出される記述が度々出てくる。

 

私も含め、日本人にはあまり知られていない史実かも知れないが、本作を読むとその過酷さ、残虐さがよく伝わってくる。

 

本作は本国アメリカでも高い評価を受け、ピュリッツァー賞やNYタイムズ紙、ワシントン・ポスト紙など多数の有力紙誌の年間ブック賞に選出されている。

アメリカ人でも「地下鉄道」の存在を知らない人が多いのかもしれない。

 

さて、本作を読んだ感想だが、やはり何故これが文学賞の1位になったのかが私にはよく分からない。

日本人に受けるような素材でも、ドラマティックな展開でも無い。

そして、訳なのか原作がそうなのか分からないが、文章が読みにくい。(特に序盤は登場人物も多く訳が分からなくなる)

センテンスが短く、虚飾の無い文体だが、文章と文章の繋がりが悪い。

決して文学性が問われるようなストーリーでは無いので、もう少し分かりやすく書いてくれれば幅広く読んで貰えると思うが。。。

ほんと、この文学賞はマニアックだわ(笑

 

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