「半席」青山文平著・・・★★★☆
御家人から旗本に出世すべく、仕事に励む若き徒目付の片岡直人。だが上役から振られたのは、不可解な事件にひそむ「真の動機」を探り当てる御用だった。職務に精勤してきた老侍が、なぜ刃傷沙汰を起こしたのか。歴とした家筋の侍が堪えきれなかった思いとは。人生を支えていた名前とは。意外な真相が浮上するとき、人知れずもがきながら生きる男たちの姿が照らし出される。
2017年版このミス4位の作品。
徒目付(かちめつけ)片岡直人が事件に隠れた真相を探る6編からなる連作短編集。
切り口の鮮やかさは直木賞作品「つまをめとらば」には及ばないものの、どの作品も事件の背後に人情があり青山文平らしく巧い。
生真面目な片岡に対し、酒と旨い物好きで飄々とした上司・内藤雅之や職を転々とする謎の人物・沢田源内との対比も面白い。
現代物のミステリィと較べ派手さは無いものの、心の機微を巧みに描いた良い短編集だと思う。
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