779冊目 オラクル・ナイト/ポール・オースター | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「オラクル・ナイト」ポール・オースター著・・・★★★★

重病から生還した34歳の作家シドニーはリハビリのためにブルックリンの街を歩き始め、不思議な文具店で魅入られたようにブルーのノートを買う。そこに書き始めた小説は…。美しく謎めいた妻グレース、中国人の文具店主M・R・チャン、ガーゴイルの石像や物語内の物語『神託の夜』。

 

オースター作品を読むと、鰻の如く掴んだようでスルリと逃げてしまうような感覚がある。

思索的と言うか、含蓄があると言うのか。

 

ニューヨーク三部作は明らかに思索的だが、それ以降の作品は物語性が強まり分かり易くなってはいるものの、逆に表層の裏に隠れたメッセージがあるような気がする。

もちろんストーリーは面白いが、奥も深く、どう読むかを読者に問い掛け、その力量を試しているのだろうか?

 

ストーリーは、主人公の作家シドニーが執筆する奇妙な物語が作中作として描かれ、妻・グレースと暮らす2人の日常に有名作家で親友のジョンが入り込み、更に文房具屋の中国人店主M・R・チャンとの幻覚的なやり取りが重なる。

 

著者が、前作「幻影の書」が交響曲なら、本作は弦楽四重奏だと評したように、スケールは小さいながらも重厚な音が重なり合い、豊かで深い音楽を奏でているようである。

 

 

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