「漂砂のうたう」木内 昇著・・・★★★☆
御一新から10年。武士という身分を失い、根津遊廓の美仙楼で客引きとなった定九郎。自分の行く先が見えず、空虚の中、日々をやり過ごす。苦界に身をおきながら、凛とした佇まいを崩さない人気花魁、小野菊。美仙楼を命がけで守る切れ者の龍造。噺家の弟子という、神出鬼没の謎の男ポン太。変わりゆく時代に翻弄されながらそれぞれの「自由」を追い求める男と女の人間模様。
第144回(2010年)直木賞受賞作。
明治初期の吉原遊郭の陰に隠れた根津遊郭(東京都文京区東大近く)を舞台に、元武士だった立番(客引き)定九郎を中心に描いた作品。
生簀(遊郭)に生きる日々にもがき、何とか逃れようとする定九郎を中心に、それを取り巻く人間模様と、現代ではあまり馴染の無い遊郭の内情が良く描かれていて面白かった。
ただ、話があっちへ飛びこっちへ飛びと枝葉が多く少し忙しかった。
もう少し絞るか、連作短編としても良いように感じたが。
ところで、著者について調べてみたら、名前(きうちのぼり)や作風からして年配の男性作家だと思ったら女性作家だった。
最近何故かそんな作家が多い。
漂砂のうたう (集英社文庫)
670円
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