759冊目 悲しみのイレーヌ/ピエール・ルメートル | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「悲しみのイレーヌ」ピエール・ルメートル著・・・★★★★☆

若い女性の惨殺死体が発見された。パリ警視庁のヴェルーヴェン警部は、裕福な着道楽の部下ルイらとともに捜査を担当することになった。殺人の手口はきわめて凄惨で、現場には犯人のものと思われる「おれは帰ってきた」という血文字が残されていた。 やがて過去の未解決事件とのつながりが浮かび上がる。手口は異なるものの、残虐な殺人であることは一致していた。これは連続殺人なのだ。

 

2016年版「このミス」ランキング2位の作品。

本作は著者のデビュー作(2006年)で、日本では前年に同じカミーユ警部シリーズ第2作「その女アレックス」が先に出版され「このミス」1位に輝いている。

 

作風は「その女アレックス」と同様、事件が異常で作品全体に異様な雰囲気が漂っている。

 

吐き気がするほどの凄惨な殺害方法と何かを主張するような不可解な犯行現場、犯人が意図するものとは何か?

手掛かりに苦しむカミーユ警部は、自宅の本棚を眺めていた時一冊の本に目が留まる。。。

 

ルメートル作品の良さは、唸るようなプロットはもちろん、個性的なキャラ設定とウイットに富んだ行動描写や心理描写により作品が支えられている点にあると思う。

 

また、本作の冒頭に「作家とは引用文から引用符を取り除き、加工する者のことである」とロラン・バルトの言葉が綴られ、巻末には「――この作品には随所に引用、あるいはそれに少し手を加えたものがちりばめられている――」とあり、ルイ・アルチュセール、ジョルジュ・ペレック、アレクサンドロ・デュマ、オノレ・ド・バルザックなど20名近くの哲学者や小説家の名前が挙げられている。

 

どこに引用があるのか私には分からなかったが、それらをモチーフにした事により本作を単なるミステリィ作品でなく文学性の高さを感じさせる作品に昇華させたのであろう。

 

読んで気分が悪くなるほどのショッキングな殺害方法で拒否反応を起こす方もいるかもしれないが、もし読むんだったら第1作の本書から順番に読んだ方がいいと思います。

先に「その女アレックス」を読むと結末が分かってしまう。

 

評価を★★★★か★★★★☆にしようか迷ったが、他のミステリィとは一線を画す作品ということで昨年10月以来久しぶりの★★★★☆にしました。

 

次々と読みたくなるような作風ではないが、ジェフリー・ディーヴァー(この年の1位)にも比肩するミステリィ作家の登場である。

 

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