758冊目 戦場のコックたち/深緑野分 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「戦場のコックたち」深緑野分著・・・★★★★

1944年6月、ノルマンディー上陸作戦が僕らの初陣だった。特技兵(コック)でも銃は持つが、主な武器はナイフとフライパンだ。新兵ティムは、冷静沈着なリーダーのエド、お調子者のディエゴ、調達の名人ライナスらとともに、度々戦場や基地で奇妙な事件に遭遇する。不思議な謎を見事に解き明かすのは、普段はおとなしいエドだった。忽然と消え失せた600箱の粉末卵の謎、オランダの民家で起きた夫婦怪死事件など、戦場の「日常の謎」を連作形式で描く、青春ミステリ長編。

 

2016年版「このミス」2位の作品。

 

本書を手に取った時、題名と表紙のデザインから戦場で料理に苦労するコックの軽めな話をイメージしたが、本書は史実に基づいた結構本格的な作品だった。

 

祖母から料理を教わった主人公のティムは、アメリカ軍の空挺師団(パラシュートで降下する先遣隊)に属するコックで仲間からキッド(子供)と呼ばれていた。

ノルマンディー上陸作戦で戦争に加わったティムは、コックとして働くだけでなく仲間たちと共にドイツ軍相手に前線で戦った。

過酷な日々を送る中でちょっとした謎が起き、それを仲間たちと解き明かしていく。。。

 

一応謎解きを軸としているのでミステリィの範疇に入っているものの、史実に基づいて描かれた戦争小説と言ってもいいのではないか?

 

傑作「スローターハウス5」でカート・ヴォガネット・ジュニアは戦争(ドイツでの捕虜生活)とSFを合体させたが、本作は戦争(連合軍対ナチスドイツ)とミステリィ(の要素は少々)を合体させ、ハードルを低くして史実の悲惨さを描いた良作だと思う。

 

読了後、初読み作家だったので深緑野分をググったら、作風に似合わず女性だったことに驚いた。

この前読んだ第二次世界大戦時の731部隊を描いた直木賞候補「破滅の王」も女性作家だったが、本作も直木賞候補となった。

 

直木賞選考委員の方々の選評通り、何故日本人がヨーロッパ戦線を描く必要があったのか?コックとして体験した戦争や、ミステリィ物としても弱い面があるかも知れないが、ヨーロッパ戦線を知らない日本人にとっては戦争について知る導入的な作品としてこのような作品があってもいいんじゃないだろうか?

 

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