748冊目 愛人 ラマン/マルグリット・ギュラス | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

ヘタな読書も数撃ちゃ当る

ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「愛人 ラマン」マルグリット・ギュラス著・・・★★★☆

18歳でわたしは年老いた―。あの青年と出会ったのは、靄にけむる暑い光のなか、メコン河の渡し船のうえだった。すべてが、死ぬほどの欲情と悦楽の物語が、そのときからはじまった…。仏領インドシナを舞台に、15歳のときの、金持の中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。

 

著者は1914年南ベトナム生まれの女性作家で、本作は84年に発表され世界的ベストセラーとなり後に映画化された。

 

紹介文にある通り本作は自伝的作品で、母と2人の兄、高校時代愛人関係だった華僑の青年との断片的なエピソードが、簡潔で抑揚が抑えられたモノローグで織り交ぜられている。

 

”わたし”を嫌った母と、母に愛された大嫌いだった長兄。

肺炎で死んだ大好きだった次兄。

「わたしは18歳で年老いた」・・・

貧しく殺伐とした家庭から逃れるように、15歳で愛人となった”わたし”の悲哀が客観的且つ諦念的に綴られ、作品全体が暗いトーンに覆われている。

自分が経験した過去の出来事にもかかわらず、「~するだろう」という俯瞰的な描写が特に印象に残った。

 

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村