713冊目 種をまく人/ポール・フライシュマン | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「種をまく人」ポール・フライシュマン著・・・★★★★

はじまりは、小さな種だった。さまざまな人種がうずまく貧民街の一角、だれも気にとめなかったゴミ溜めが、すこしずつ変わりはじめる。

 

続けてティーンエイジャー向けの薄い本です。

ドフトエフスキー「おかしな人間の夢」は非常に難解な本でほっこり出来なかったが、この本ならどう見ても間違いないだろうと思い読んでみた。

 

この話は人種も性別も年齢も違う13人の視点から描かれている。

場所はアメリカ北東部オハイオ州(ニューヨークの西)のエリー湖に隣接する町クリーブランド。

時代は1970年台だと思われる。

 

移民たちが集まって暮らす貧民街の一角に、廃品やゴミが捨てられた空地があった。

そこにベトナム人の少女・キムが、写真でしか見たことのない亡くなった父親に「私のことを気づいて褒めてもらいたい」と願い、マメを蒔く。

キムは毎日のように水をまきに来ていた。

 

それを隣のアパートの部屋から見ていたルーマニア人の老女・アナは少女が何をしているのか不審に思い、マメとは知らず掘り返してしまう。

アナは慌ててマメを元に戻し、双眼鏡を買ってキムとマメの様子を毎日見ていた。

 

暑い日が続き、しおれてきたマメを見てアナは同じアパートに住む学校の用務員・ウェンデルに、マメを助けてあげてと頼み、ウェンデルは土を盛って水をかけてあげる。

振り向くと、キムが水を持って立っていたが、言葉が通じずウェンデルは笑顔を見せながら帰って行った。

 

また、マメの様子を見に来たウェンデルは、聖書の一節「・・・・・子どもがみちびく・・・・・」という文句を思い出し「人生には変えられない事はいっぱいあるが、このゴミ捨て場の一角を畑にすることなら出来る」と学校からシャベルを借りて帰って来る。。。

 

いや~、ほっこり。。。(^~^)

 

一人の少女が蒔いた種から、人種や言葉や年齢を超えて連鎖反応が起こり、次第に大きなコミュニティを作っていくという話。

本作の良いところはやはり13人のそれぞれの視点から主観的にこの話を描いている点だと思う。

それぞれの人達の人生を通じて、この一つの物語を語っている事で、単純なストーリーに深みを与えている。

もし、三人称だったら、ただの良い話で終わってしまうと思う。

 

久しぶりに穢れたオヤジの心も洗われた、良い作品でした。。。!(´Д`;)

 

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