「種をまく人」ポール・フライシュマン著・・・★★★★
はじまりは、小さな種だった。さまざまな人種がうずまく貧民街の一角、だれも気にとめなかったゴミ溜めが、すこしずつ変わりはじめる。
続けてティーンエイジャー向けの薄い本です。
ドフトエフスキー「おかしな人間の夢」は非常に難解な本でほっこり出来なかったが、この本ならどう見ても間違いないだろうと思い読んでみた。
この話は人種も性別も年齢も違う13人の視点から描かれている。
場所はアメリカ北東部オハイオ州(ニューヨークの西)のエリー湖に隣接する町クリーブランド。
時代は1970年台だと思われる。
移民たちが集まって暮らす貧民街の一角に、廃品やゴミが捨てられた空地があった。
そこにベトナム人の少女・キムが、写真でしか見たことのない亡くなった父親に「私のことを気づいて褒めてもらいたい」と願い、マメを蒔く。
キムは毎日のように水をまきに来ていた。
それを隣のアパートの部屋から見ていたルーマニア人の老女・アナは少女が何をしているのか不審に思い、マメとは知らず掘り返してしまう。
アナは慌ててマメを元に戻し、双眼鏡を買ってキムとマメの様子を毎日見ていた。
暑い日が続き、しおれてきたマメを見てアナは同じアパートに住む学校の用務員・ウェンデルに、マメを助けてあげてと頼み、ウェンデルは土を盛って水をかけてあげる。
振り向くと、キムが水を持って立っていたが、言葉が通じずウェンデルは笑顔を見せながら帰って行った。
また、マメの様子を見に来たウェンデルは、聖書の一節「・・・・・子どもがみちびく・・・・・」という文句を思い出し「人生には変えられない事はいっぱいあるが、このゴミ捨て場の一角を畑にすることなら出来る」と学校からシャベルを借りて帰って来る。。。
いや~、ほっこり。。。(^~^)
一人の少女が蒔いた種から、人種や言葉や年齢を超えて連鎖反応が起こり、次第に大きなコミュニティを作っていくという話。
本作の良いところはやはり13人のそれぞれの視点から主観的にこの話を描いている点だと思う。
それぞれの人達の人生を通じて、この一つの物語を語っている事で、単純なストーリーに深みを与えている。
もし、三人称だったら、ただの良い話で終わってしまうと思う。
久しぶりに穢れたオヤジの心も洗われた、良い作品でした。。。!(´Д`;)
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