712冊目 おかしな人間の夢/フョードル・ドストエフスキー | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「おかしな人間の夢」フョードル・ドストエフスキー著・・・★★★★

 

ここのところちょっと忙しいので、薄くて肩の凝らない本を読もうと思い、ティーンエイジャー向きのコーナーを物色していたらドストエフスキーの本書を見つけた。

 

あのドストエフスキーが?と思いつつ手に取ると、ページ数は丁度100ページで、しかも字が大きく挿絵まで入っていて中学生ぐらいを対象にした本だった。

ドストエフスキーでもこの本なら肩は凝らないだろうと思って読んでみた。

 

が、、、非常ーに難解だった。。。(゚Ω゚;)

本作は晩年に書かれた作品で、遺作となった「カラマーゾフの兄弟」の前に書かれた。

 

ひとりの男が、おれははおかしな人間で、周りの人間も気狂いだと言って相手にされず、この世の事はすべてどうでもいいと考え、いつでも自殺できるように抽斗にピストルをしまっていた。

 

そんなある夜、男は帰宅途中にひとりの少女に出会う。

少女は「お母ちゃんが!お母ちゃんが!」と絶望して叫んでいた。

泣きながら少女はついてくるが、男は怒鳴りつけて追い払ってしまう。

 

帰宅した男は、今夜こそとピストルを取り出し覚悟を決めるが、少女の事を思い出し、自分のとった態度を考えるうちに自殺を思いとどまる。

そしてその夜、男は夢を見る、、、

 

ピストルを撃ち自殺した男は墓に入れられ、何時間か?何日か?経つと突然正体の分からない者に抱き取られ、男は宇宙空間に飛んだ。

宇宙を浮遊する男は、地球への愛と人間の美しさを感じ、自問自答し真理を悟る。

目覚めると、無限の歓喜が男の全存在を揺さぶり、男は「伝道に出かけるぞ!」と決意する。。。

 

実に哲学的、宗教的な話で大人が読んでも果たして理解できるか?

 

もしかしたら、若い人のほうが体感的に分かるのかもしれない。

世俗の垢がこびりついた頭で考えようとしても、この本は理解できないような気がする。

ドストエフスキー自身が悟りを開いたような、宗教的で幻想的な作品だった。

 

本書を読んで私の好きな逸話を思い出した。。。

 

ある1人の修行僧が悟りを開こうとして、仏陀の教えを乞う為にインドを旅していた。

そこに、1本の川が流れていた。

僧は泳いで渡ろうと泳いでいくと、一体の死体が流れてくる。

その死体から離れようと泳ぐが死体はどんどん自分の方に近づいてくる。

僧は自分も死ぬのではないかと恐怖に襲われ懸命に泳いだ。

しかし、その死体がとうとう目の前に来た。

観念した僧がその死体を見ると、なんとそれは自分自身の死体だった。

自分の死体を見た僧は大笑いして、来た川岸に戻っていった。

それを見ていた人々は、岸に上がって来た僧が全く別人のように変わっている事に驚いた。

そのひとりが「仏陀の元に行かなくていいのですか?」と尋ねると、僧は「もうその必要は無くなった」と答え、来た道を戻って行った。。。

 

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