714冊目 レクイエム/アントニオ・タブッキ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「レクイエム」アントニオ・タブッキ著・・・★★★☆

七月は灼熱の昼下がり、幻覚にも似た静寂な光のなか、ひとりの男がリスボンの街をさまよい歩く。この日彼は死んでしまった友人、恋人、そして若き日の父親と出会い、過ぎ去った日々にまいもどる。

 

続けて薄い本シリーズ(と言っても170Pを超える)3冊目。

 

イタリア現代文学を代表する作家・タブッキ(1943-2012)の1992年の作品。

 

7月の暑い日、イタリア人の男は桟橋で二十世紀最高の詩人を待っていた。
しかし、詩人は現れない。


男はリスボンの町を歩きタクシーや列車を乗り継ぎ、いろんな人たちと巡り合う。
「麻薬中毒の青年」「足の悪い宝くじ売り」「タクシーの運転手」「ジプシーの婆ちゃん」・・・計23人

本作の副題に「ある幻覚」と付けられているとおり、男が遭遇する人々は幻覚のようで、謎めいていて不条理的でもある。

 

本作には多くの人たちと共に多くの料理も出てくる。
ポルトガル料理のようだが、巻末にはそのレシピも掲載されている。
このように小説の中で登場する料理は、何故かおいしそうなイメージが湧く。

作風は「遠い水平線」や「インド夜想曲」を想起させるが、それらの作品と違い本作には余り情趣や情緒性が感じられず、残念ながら私的にはいまひとつだった。

著者が巻頭で、本書はポルトガル語で書かれ「このような話はポルトガル語でしか書き得なかったからだ」と記している。
本書は、ポルトガル語版をイタリア語版に訳された物を更に訳したもので、その辺りに文脈の微妙なズレがあるのだろうか?
 

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