「乙女の密告」赤染晶子著・・・★★★☆
ある外国語大学で流れた教授と女学生にまつわる黒い噂。乙女達が騒然とするなか、みか子はスピーチコンテストの課題『アンネの日記』のドイツ語のテキストの暗記に懸命になる。そこには、少女時代に読んだときは気づかなかったアンネの心の叫びが記されていた。やがて噂の真相も明らかとなり……。
第143回(2010年)芥川賞受賞作品。
読み始めて「これは少女マンガの世界か?」と思ったが、「アンネの日記」を題材にした重さを徐々に感じた。
選考評を見ても賛否が分かれるような戯画的な作品である。
ドイツ語のスピーチコンテストに向け「ヘト アハテルハイス(アンネの日記)」を暗唱する乙女(女子大生)たち。
その担当教授で厳しい指導をしながらも、いつもアンゲリカという名前の西洋人形を抱いている奇妙なドイツ人教授・バッハマン。
何回も留年し、スピーチコンテストに命を懸ける麗子様。
麗子様にあこがれるみか子。
バッハマン教授に指導を受けながら、アンネは何者だったのか?アンネを密告したのは誰か?をみか子は問い掛けられる。
私は「アンネの日記」を読んだ事が無いので、この暗喩のような問いに対する答えは分からないが、本作は少女マンガのような筆致とは裏腹に深い問答を感じた。
石原慎太郎が選評で「こんな作品を読んで一体誰が、己の人生に反映して、いかなる感動を覚えるものだろうか。」とコメントしているが、果たして石原の作品がそのレベルに達しているのか?
なお、著者の赤染は昨年9月、42歳の若さで亡くなっている。
合掌。
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