693冊目 ライオンの皮をまとって/マイケル・オンダーチェ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「ライオンの皮をまとって」マイケル・オンダーチェ著・・・★★★★

トロント、一九三〇年代、移民たちの夢。橋から落ちる尼僧、受けとめる命知らずの男。失踪した大金持ち、あとを追うラジオ女優…。それは、パトリックが若い娘に語って聞かせる“官能”と“労働”の物語。

 

あけまして おめでとうございます

昨日まで忙しい正月を過ごしてました。

 

元日は帰って来た娘たちと一緒に、ボウリング~イオンモールで買い物。

2日は昼から我が一族の新年会、続け様に2時から5年ぶりの中学の同窓会と2連チャン。

3日は朝から上の娘を名古屋に送りながら、熱田神宮に初詣~栄・名駅で買い物&晩御飯を食べ、来た道を戻って我が家を通り越し、下の娘の清水のマンションへ行って泊まり。

4日は、3年ぶりに嫁さんの実家・三島に行って、昨年出来た日本一長い歩道吊り橋(400m)・三島スカイウォークを初渡り。

想像以上に揺れましたが、晴天で富士山と駿河湾が一望できる素晴らしい景色でした。

その後、三島の有名蕎麦屋で昼食をとり、実家に行き帰宅。

2日で走行距離約500kmの長距離ドライブ。

昨日は仕事始めで、夜は地元の政財界・各種団体が集まる毎年恒例の新年賀詞交歓会に出席し、2次会にも出て痛飲し1時に帰宅。

ハードな5日間で読書する暇がありませんでした。。。(;´Д`A

 

さて、前置きが長くなりましたが、新年一発目は、昨年最優秀作家賞を受賞(個人的に)した、マイケル・オンダーチェの3作目「ライオンの皮をまとって」です。

 

「ビリー・ザ・キッド全仕事」「バディ・ボールデンを覚えているか」の前2作品は散文や詩など断片的な構成で描かれ想像を掻き立てられる作品だったが、本作はストーリー性を帯びた小説形態に近付き、前2作と次作の「イギリス人の患者」の中間位に位置する小説である。

 

スリランカで生まれ、少年時代にイギリスに渡り、その後カナダ人作家として生きるオンダーチェと同じく、本作に登場する人物達はイギリスからカナダに移民した人々である。

 

主な登場人物は、語りの中心となる少年パトリック、橋梁工事のエキスパートで後にパン屋となるニコラス、そして次作「イギリス人の患者」で登場する泥棒カラヴァッジョと看護婦に成長する少女ハナと母アリス。

 

訳者は「ビリー・ザ・キッド全仕事」で素晴らしい翻訳をした福間健二で、そのあとがきによれば、本作で出てくるトロントの橋や水道施設、その工事に関わった人物などは事実に基づいているそうである。

 

1930年代のトロントで生きた人々のエピーソードが、様々な視点から交錯し描かれ、ストーリー性はあるもののオンダーチェらしい詩的文体と断片的な散文により、他の作品に較べ読み解くのが難しかった。

 

タイトルの「ライオンの皮をまとって」はギルガメッシュ叙事詩(古代メソポタミア文学作品で実在していた可能性のある古代メソポタミアの伝説的な王ギルガメシュ(紀元前2600年頃)を巡る物語)からの一節で、本作はジョン・バージャー「G.」(昨年読んだ)の実験的手法から影響を受けたキュービズム小説だそうである。

 

次作の「イギリス人の患者」の陰に隠れて本作は知名度が低く、一読では理解も難しい作品だったが、奥が深く再読する価値がある一冊に間違いは無い。

 

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