685冊目 二つ、三ついいわすれたこと/ジョイス・キャロル・オーツ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「二つ、三ついいわすれたこと」ジョイス・キャロル・オーツ著・・・★★★★

カリスマ的な魅力をもつ友人、ティンクが謎の死をとげた。ティンクと仲良くしていたメリッサやナディアは、なかなか立ち直れない。彼女たちも、家族や友人関係の中でそれぞれの生きづらさに苦しんでいるが、いまだ感じられるティンクの存在に救われる。10代のもつ危うさと、静かな希望を描く物語。

 

以前読んだ「ノーベル文学賞にもっとも近い作家たち」の中の1人として、著者が紹介されていて興味を惹いた。

著者は1938年生まれ(現在79歳)のアメリカの女性作家。

本国では数多くの作品が出版されノーベル賞候補として名前が挙がるが、日本では知名度が低いようで、翻訳本も9冊のみである。

 

本書は3人の女子高生を主軸に描いた作品で、分類的にはヤングアダルト(ティーンエイジャー)向けの作品となっている。

 

ストーリーは3部構成になっていて、第1部「ミス・パーフェクト」の主人公はその名の通り、有名大学に早期合格しスポーツも万能、容姿もスラリとした美人のメリッサ。

メリッサは父親から過度な期待を持たれ、父親に愛されたいが為に自分を抑えて優等生として振る舞っていた。

しかし、その重圧や両親の離婚の危機、そして親友(ティンク)の死に直面し心のバランスを失い、自傷行為を始める。。。

第2部「ティンク ティンク ティンク ―雑記」の主人公はティンク。

11年生(高校2年)の時転校してきたティンクは、小さい頃TVドラマに人気子役として出演し、母親も有名な女優だが、ティンクはそれを嫌がり、誰にも媚びず自分の主義を貫き、他人を寄せ付けない小生意気で野生児のようなタイプの女の子だった。

そして第3部「尻軽」の主人公はナディア。

ぽっちゃり気味で愛らしいナディアは、ちょっとおバカな子を演じることで、周囲の人間に愛されようとし、評判の良くない男子につけこまれトラブルに巻き込まれる。

その後、自分と真摯に向き合ってくれた男性教師に片想いをし、父親がコレクションしていた高価な絵画を贈り主が分からないようにこっそり贈り、これが大変な事態を招いてしまう。

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転校して来て孤立していたティンクに、メリッサたちが意を決して声を掛けると、意外にもティンクは喜んで受け入れ、3人は仲良しになる。

ところが9ヶ月後、ティンクは「あのさ、しばらくのあいだみんなと会えないかも」というメールを残して亡くなってしまい、その死因はメリッサたちには分からなかった。

 

メリッサとナディアは大きな喪失感を味わい、いろんな問題に直面し、死を意識するまでになるが、心の中にいるティンクの存在が2人に勇気を与える。。。

 

支配的で難しい親子関係や思春期の少女らの不安定で繊細な心と、それを乗り越えていく友情を描き、オジさんが読んでも読み応えのある心に沁みる作品だった。

 

本作は2014年(日本語版)の出版で著者は70歳をとうに越していたと思われるが、少女達の心理や言動などの描写はその年齢で書いたとは感じさせず、実に生き生きとしている。

 

又、小難しい作品をイメージさせるノーベル文学賞であるが、本作はティーンエイジャー向けという事もあってか、難しさは全く無く、それでいて奥の深い作品となっている。

 

著者は本書のようなヤング・アダルト向けの他、ミステリィや戯曲なども執筆している。

日本でももっと読まれてもいい作家だと思うが。。。

 

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