665冊目 山の音/川端康成 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「山の音」川端康成著・・・★★★☆
深夜ふと響いてくる山の音を死の予告と恐れながら、信吾の胸には昔あこがれた人の美しいイメージが消えない。息子の嫁の可憐な姿に若々しい恋心をゆさぶられるという老人のくすんだ心境を地模様として、老妻、息子、嫁、出戻りの娘たちの心理的葛藤を影に、日本の家の名状しがたい悲しさが、感情の微細なひだに至るまで巧みに描き出されている。
 
いやー、久々の台風直撃。
うちの南東すれすれを通過して上陸。
暴風雨の音で寝不足です。。。(><;)
 
さて、本作は川端康成の最高作と位置付けられ、戦後日本文学の最高峰とまで評された作品で、海外での評価も高く「史上最高の文学100」の中では日本の作品で唯一選出されている。
また、往年の名優、原節子(伝説の名女優)と上原謙(加山雄三のお父さん)出演により映画化され、その後TVドラマ化も3回されている。
 
本作は、鎌倉に住む一家の日常を描いた長編の家族小説であるが、雑誌に断続して発表された為、連作短編のような作風である。
家族構成は、この家の主で還暦を過ぎた信吾、妻保子、長男の修一と嫁の菊子、亭主と不仲で出戻ってきた長女房子と2人の子どもたちである。
 
信吾は、昔、秘かに憧れを抱いていた美人だった保子の姉を思い出し、嫁の菊子に恋情とも言える仄かな思いを持っていた。
信吾と同じ職場で働く息子の修一は、戦争未亡人の女と浮気をしているが、それを家族の誰もが知っていた。
これがストーリーの核となり、老いを感じ始めた信吾の孤独と菊子に対する心の機微、家族間の心理的葛藤を描いている。
 
文章は端正&平易で、派手さ&難解さは全く無く誰でも読めるのだが、どうもこの手の地味目な作品に私は弱い。
地味(微妙)であるが為に、本作の素晴らしさを感じるのが私にとっては難しいのである。
 
三島由紀夫は本作について「もはや贅言(ぜいげん=無駄な事を言う事)を要しまい。その美と鬼気と芸術的完璧さは、すでに巷間周知の事実である」と述べ、川端の最高作と評している。
 
他にも多数の評論家が本作の素晴らしさについて解説されているのだが、言っている事は分かるんだけどそれ程凄い事だと感じない。
 
川端が本作を書いたのは50歳の時で、現在の私よりも年下である。
う~ん、これはまだ私の修行が足りないという事か?
いや、まだ老境を悟るにはまだまだ若いという事であろう。。。納得。( ̄_ ̄ i)
 

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