664冊目 機械・春は馬車に乗って/横光利一 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「機械・春は馬車に乗って」横光利一著・・・★★★★

 

先日、ラディゲについて調べていたところ、三島と同じく、ラディゲの「ドルジェル伯の舞踏会」に横光の「機械」が影響を受けたとあり本書を読んでみた。(「ドルジェル伯の舞踏会」を先に読めばよかったが)

 

横光利一(明治31年~昭和22年)は川端康成と共に、「新感覚派」として活躍し「機械」は「日本のモダニズム文学の頂点とも絶賛された」そうである。

 

本書は表題作の「機械」「春は馬車に乗って」他10篇からなる傑作短編集である。

 

表題作の「機械」はネームプレートの製作所で働く男たちによる、お互いに疑心暗鬼に陥る姿を描いているが、その手法は一人称の「私」以外の四人称の「私」の視点から描くという、斬新な手法を用いている。

他者の心理と、自分がどう思われるか?を探りながら各々が行動する不安心理を描き、男たちは次第に機械の歯車のように心理が合致していくが、結末は同僚が酒と間違え薬物を飲んで死んでしまい、私が殺してしまったのか?と自分自身の事も分からなくなってしまうという、自己の存在について描かれた作品。

 

「春は馬車に乗って」は結核を患い入院している妻が、死の間際になって我がままを言い、その言動に看護する夫が振り回されるという、著者自らの体験をもとに愛と死との間の葛藤を描いた作品。

 

その他、「時間」は金が無く宿屋から逃げ出し生死を彷徨う劇団員たちの顛末を描いた作品で、これも「機械」のようなお互いに疑心暗鬼になる人間心理を描いている。

 

「田虫」は田虫(股間にできる水虫みたいな湿疹)に犯されたナポレオンが、田虫の拡大による恥辱と劣等感を埋める為に、田虫が自分の体に拡大するように侵略を拡大するといった滑稽的な作品。

 

このように、題材は豊富で、どの作品も葛藤する人間心理を技巧的且つ独創的に描いており、なかなか面白い短編集だった。

 

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追記:

この前の日曜日、ショッピングモールの本屋内にある併設カフェで半日、本(図書館で借りた)を読んでました。

初めてそんな所に行ったんですが、あそこって本屋に置いてある本を勝手に持ってきて好きなだけ読めるんですねぇ!!

下手すりゃ1冊まるまる読めちゃう!!

吃驚でした。。。(゜д゜;)

 

読書に飽きて店内の本を物色してたら、1冊の本を発見し思わず笑った。

蛭子収能著「笑われる勇気」!。

もちろんこの書名はアドラー心理学の岸見一郎著「嫌われる勇気」をパロった本だと思うが、私は「嫌われる勇気」よりも「笑われる勇気」の方が好きだな。

他者の評価を気にして生きる必要はないが、私は人に嫌われたくは無い。

嫌われるか?笑われるか?

他者の評価を気にしない生き方をどちらか選べと言われたら、私は笑われる方を選ぶな。。。!(´Д`;)

だいたい人に反感を持たれるような人間と、どうやって共同体感覚を築きあげろっちゅうねん!

 

恐るべし、蛭子さん。。。ヽ(;´Д`)ノ