659冊目 肉体の悪魔/レイモン・ラディゲ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「肉体の悪魔」レイモン・ラディゲ著・・・★★★☆

第一次大戦下のフランス。パリの学校に通う15歳の「僕」は、ある日、19歳の美しい人妻マルトと出会う。二人は年齢の差を超えて愛し合い、マルトの新居でともに過ごすようになる。やがてマルトの妊娠が判明したことから、二人の愛は破滅に向かって進んでいく……。

 

先日、三島由紀夫についてウィキペディアで調べていたところ、少年時代にラディゲを読み「盗賊」「美徳のよろめき」などが影響を受けたと紹介されており、本書を手にとってみた。

 

ラディゲは20歳(1903-1923)という若さで夭折し、小説は本書と「ドルジェル伯の舞踏会」の2冊しか書いていない。

三島は「ドルジェル伯の舞踏会」を、少年時代の私の聖書だったと述べたそうだ。

 

ラディゲは15歳頃に詩人のジャン・コクトーに見いだされ出版などで力を借り、その後一緒にヨーロッパ各地を転々とするが、腸チフスを患い短い生涯を閉じた。

臨終を看取ったコクトーはラディゲの早すぎる死に深い衝撃を受け、その後およそ10年にわたって阿片に溺れ続けた、そうである。

三島はこのエピソードを短編「ラディゲの死」として作品化している。

 

さて本書であるが、ストーリーは紹介文にある通り高校生の少年が人妻と不倫する物語である。

現代の、何でも起こり得る時代からすればそれ程の衝撃は無いが、当時(大正末期)は反道徳的な衝撃作として話題となりベストセラーとなったそうだ。

 

文体は拙い(訳のせいか)と感じるほど平易で、内容はともかくとして中学生でも楽に読めると思う。

少年のマルトに対する思いと、夫のジャックやマルトの両親、少年の両親との駆け引きなど、思春期に特有な揺れる心理を描いているが、その文体と相俟って、オジさんの私にはそれ程本作が優れているとは感じなかった。

 

調べてみると、本作は過去何人かに翻訳されており、私が読んだのは松本百合子訳だが絶版になっている。

アマゾンの評価コメントを見ると、他の訳書の方が良いような感じである。

 

本書の表紙と裏表紙に少年の写真が大きく写されているが、これがラディゲだとしたらかなりの美少年である。

 

 

 

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