656冊目 ブラックライダー/東山彰良 | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「ブラックライダー」東山彰良著・・・★★★★

ようこそ。ここは地球の歴史がいちど終わったあとの新しい世界―弱肉強食の大西部。人を食糧とする者。それを許さない者。暴れる牛。蟲の蔓延。アウトローと保安官。人と牛の子。異形の王。虐殺。征伐。慈悲。突き抜けた絶望の先に咲く、希望の花―「世界」で闘える愛と暴力の暗黒大活劇。

 

2014年版「このミス」3位の作品。

 

5月に読んだ著者の直木賞受賞作「流」が素晴らしい作品で、本書は前々から読んでみたいと思っていたが、本の厚さ(単行版604P)に加えびっちり詰まった文章に気後れし後回しになっていた。

 

物語は2200年頃のアメリカ南部~メキシコ。

「六・一六」と呼ばれる地球規模の大変動が起こり、作物や家畜は絶滅し、残された人間は人肉を喰い命を繋いでいた。

その世界は暴力、虐殺、略奪が蔓延る暗黒世界だった。

さらに追い打ちを掛けるように未知の生物(蟲)が人間に寄生して命を奪い、空気感染により蔓延し、町をまるごと絶滅させていく。

そこへ、食用肉として遺伝子操作により開発され、人間と牛の間に生まれた牛腹の子ジョアン・メリヂーヤがその蔓延を防ぐべく、感染した人間を女も子供も関係無く無慈悲に次々と殺害していく。

果たして、ジョアン・メリヂーヤは救世主なのか?悪魔なのか?。。。

 

近未来的で退廃し暗黒化した独特な世界感と、アウトローな人間たちによる愛と暴力の奇想天外な物語を、壮大なスケールと緻密な描写で見事に描いている。

しかしながら、登場人物が多すぎて人間関係がこんがらがり、壮大は良いが綿密に書き過ぎて長い。

著者自身は登場人物とエピソードを盛り込み、物語に重層的な厚みを持たせたかったのだろうが、読者には少々辛いと思う。

出来ればもう少し人物を絞り、短縮して欲しかった。(これから読む方は人物相関のメモをとる事をおすすめします)

 

しかし、最近の似通った作風のミステリィ作品が多い中で、本作も「流」も最近の国内作家の中ではその筆力と独自性は傑出しており、その力量は認めざるを得ない。

これからも、過去と未来の作品を読んでいきたい作家の1人である。

 

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