649冊目 崩れゆく絆/チヌア・アチェベ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「崩れゆく絆」チヌア・アチェベ著・・・★★★

古くからの呪術や慣習が根づく大地で、黙々と畑を耕し、獰猛に戦い、一代で名声と財産を築いた男オコンクウォ。しかし彼の誇りと、村の人々の生活を蝕み始めたのは、凶作でも戦争でもなく、新しい宗教の形で忍び寄る欧州の植民地支配だった。

 

最近「世界最高の小説 BEST100」というものを見つけた。

https://matome.naver.jp/odai/2133241493872010001

 

それによれば「ノルウェー・ブック・クラブにより2002年世界54カ国の著名作家100人の投票で選ばれた【The 100 Best Books of All Time】順位は1位のドン・キホーテ以外非公開。」なんだそうである。

 

この中で(挫折も含め)20冊程読んでいるが、1位の「ドン・キホーテ」をはじめ古典物が多く、紀元前に書かれた物もあり少々敷居が高そうである。

 

という事で今回その中でも新し目の本書(1958年)を選んでみた。

著者のアチェベ(1930-2013)は、ナイジェリア出身のイボ人(アフリカ民族)で、”アフリカ文学の父”と称されているようである。

 

ストーリーは、イボ人の村では英雄的存在の男オコンクウォと、その家族(妻が3人いてそれぞれに子どももいる)、村の人々との日々のエピソードが描かれている。

このイボ人社会は長老を頂点に、男たちの絶対的社会で成り立ち、女たちや子どもは服従して毎日を暮らす。

呪術や迷信を信じ、およそ文明とは程遠い未開の地だった。

些細な事でも、それを破ればオコンクウォは、子どもだろうが女だろうが容赦なく暴力でねじ伏せる。

殺人を起こし隣村から身代わりで連れてこられ、オコンクウォに3年間息子の様に育てられた少年も、村の掟により殺されてしまう。

オコンクウォ自身も、偶発的に人を殺してしまい、家は焼き払われ家族たちと共に7年間村から追放された。。。

 

本作の3分の2ぐらいがこのようなエピソードが綴られ少々退屈だった。

後半になりイギリスからの宣教師や廷吏が村に現れ、村人たちにキリストの教えを説き次々と改宗させ、裁判で自分たちのルールで裁き、村の秩序と絆を崩していく。

 

文明社会から見れば野蛮とも言えるイボ人たちの社会と、未開の地に分け入り、隣人愛を説くキリスト教と西洋のルールを持ち込み植民地化していった行いはどちらが正しいのか?

 

本作は、アフリカの植民地化を初めてその内側の人間により描かれ批判した作品という事で、史実に基づき描かれたノンフィクションに近い作品のように感じた。

 

そういう意味ではそれまでに無かった革新的な作品だったかもしれないが、砂の数ほどある文学作品の中で、果たして本作が「世界最高の小説」と評価される程文学的に凄いか?と問われたら私には疑問である。

 

もう少し、前半を削り、後半の物語を長めに描いてくれれば面白い作品になった感じがするのだが。。。

 

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