「すべては消えゆく」アンドレ・ピエール・ド マンディアルグ著・・・★★★★
五月の陽光が降りそそぐパリの美しい午後。娼婦でもあり女優でもある分身のような二人の宿命の女が、エロスと血の儀式を繰りひろげる。遺作となった本書においてマンディアルグ独特の魔術的文体の催眠効果は頂点をきわめ、現代版マニエリスムに到達する。
「話題の新刊」まつりで、国内の人気作ばかり読んだ反動からか、マニアックな海外作家物が続きます。。。。(´д`lll)
本日はフランス(いや世界?)を代表する、エロティシズム作家マンディアルグの遺作となった作品です。
私は過去2冊の著書を読んでいるが、退廃的でエロスと狂気に満ち、且つ幻想的で危険な世界に私もすっかり魅了されてしまった。(;´▽`A``
本書でもその世界観は共通している。
本書は2部構成になっており、第1部のストーリーは、パリの地下鉄車内での53歳の男ユゴー・アルノルドと、舞台女優であり娼婦のミリアムとの出会いで始まる。
電車内でユゴーの隣に座っていた女(ミリアム)は人目もはばからず化粧をしはじめる。
ユゴーを誘うようなミリアムの仕草に惹かれ、2人の間に会話もないままユゴーは不意にミリアムの手に唇を押し当てるがミリアムは下車し「全品一掃処分(すべては消えねばならぬ)」と書かれたポスターの下のベンチに腰掛ける。
ミリアムへの欲望が抑えられず、ユゴーは次の駅で下車し前の駅に引き返すと、ベンチにはユゴーを待っていたかのようにミリアムが座っていた。。。
この後の2人は舞台演劇が如くの戯曲的なセリフのやりとりが続き、ミリアムはユゴーを娼館に誘い込む。
性描写も単なるエロ作品には無い高い文学性を保ち、退廃と狂気と幻想的世界を描いている。
この後ユゴーが悲惨な目に会い1部が終わるのであるが、ユゴーの揺れ動く心情描写を精緻に描き、ミリアムとの演劇のようなセリフのやりとりは少々難解ではあったが、それが本書を格調の高い作品に昇華させている。
2部では自宅に戻る途中に偶然違った女(メリエム)に遭遇し、ユゴーの身に起きた不条理で滑稽的とも言える結末でこの物語は終わる。
解説によるとマンディアルグは生前から本書を最後の作品(表題にもそれを表現したのか?)としていたようで、それに相応しい作品(私はまだ3冊しか読んでいないが)なのではないだろうか?
すべては消えゆく (白水uブックス―海外小説の誘惑)
Amazon |