638冊目 ビリー・ザ・キッド全仕事/マイケル・オンダーチェ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「ビリー・ザ・キッド全仕事」マイケル・オンダーチェ著・・・★★★★☆

血は死ぬまでおれについてまわった首飾りだ
左利きの拳銃、強盗や牛泥棒を繰り返し、21人を手にかけた殺人者にして、多くの女たちに愛された伊達者――西部の英雄ビリー・ザ・キッドの短い生涯は数々の伝説に彩られている。友人にして宿敵の保安官パット・ギャレット、のっぽの恋人アンジェラ・D、無法者仲間でライフルの名手トム・オフォリアードら、ビリーをめぐる人々。流浪の日々と束の間の平和、銃撃戦、逮捕と脱走、そしてその死までを、詩、散文、写真、関係者の証言や架空のインタビューなどで再構成。ときに激しい官能、ときにグロテスクなイメージに満ちた様々な断片を集め、多くの声を重ねていく斬新な手法でアウトローの鮮烈な生の軌跡を描いて、ブッカー賞作家オンダーチェの出発点となった傑作。

 

本書は、私が「イギリス人の患者」で最高評価をした、マイケル・オンダーチェの初期(デビュー?)の作品である。

ある程度の年齢以上の方なら「ビリー・ザ・キッド=西部劇のヒーロー」という感じでご存じであろう。

しかし、ビリーのファンや西部劇のファンとかいう方以外、それ以上彼の事については知らないと思うので、彼の事を少し紹介します。

 

 

身長は160cm足らずで以外と小さかったようだ

 

ウィキペディアより抜粋すると

1859年11月23日、ニューヨークに生まれ西部のニューメキシコ州で育ったと言われる。

12歳の時に、母親を侮辱した男を殺してアウトローとなったとされ、10代はじめに殺人を犯してから死ぬまでに21人を殺害した(メキシカンやインディアンは含まない)とされる。(諸説あり)

 

リンカーン郡でイギリス移民ジョン・タンストールの売店の用心棒となったが、商売敵との縄張り争いが拡大し、リンカーン郡戦争と呼ばれる騒動に発展、過失で4人を射殺し1880年12月に友人でもあった保安官、パット・ギャレットによって仲間と共に逮捕される。1881年4月18日に刑務所を脱走。このことが『ニューヨーク・タイムズ』で報じられ、有名となる。

 

1881年7月14日、ニューメキシコ州フォートサムナーにてギャレットに射殺される。その時ビリーは丸腰で、寝室から食べ物を取りに部屋を出たところを闇討ちされたと言われる。

 

射撃の腕前について

多くの目撃者が居た一例を挙げると、ビリーがサムナー砦に潜伏していた時、ビリーが居たサロンに流れ者のカウボーイのジョー・グランドがやって来た。ジョーは喧嘩っぱやく自慢の真珠のグリップの拳銃を抜きたがる危険な男だったが、ビリーはまず持ち味の人当たりの良さを発揮してジョーに拳銃を見せてくれるように頼み、残弾を確かめて初弾が空のシリンダーに当るように回しておいた(または弾を抜き取ってしまっていたとも)。やがて口論になり、ビリーがサロンの入口に向かうとジョーはビリーの背に向けて引き金を引いた。撃鉄が空のシリンダーを叩く音を聞くと、ビリーは凄まじい速さで振り返りながら抜き撃ちをし、ジョーの眉間を三発撃ち抜いた。何事もなかったかのように鼻歌を歌いながら去っていくビリーの後に残された死体を確かめると、ほぼ同じ場所を撃ち抜いた弾痕はコイン一枚分ほどの大きさしかなかったという。

 

ウィキペディアの記事を読んだだけでは、強盗や殺人を犯した人間が何故ヒーロー扱いなのか?が分からないのと、21歳の若さで死んだ事に驚いた。

 

さて、だいぶ前置きが長くなりましたが本書について。。。

「ビリー・ザ・キッド全仕事」という題名からして、ビリー・ザ・キッドの生涯を描いた物語だと思っていたが、本書は実に変わった作品だった。

今までこんな本に出会った事は無い。

 

説明文にある通り、本書の構成は、詩、散文、写真、関係者の証言やインタビュー記事(架空のようだ)など、それらがどれも断片的に綴られていて、1人称だったり3人称だったり、誰の事について書かれているのかも定かでないような感じだった。

筋書きが無く、断片的に書かれているので、その生涯などはまるで分からない。

しかし、作品全体が無骨で凄みがあり、ハードボイルドの雰囲気が漂いながらも詩情にあふれ奥深い。

 

根底には「イギリス人の患者」にも通じたものを感じるが、ストーリー仕立ての小説である分「イギリス人の患者」の方が理解はしやすいと思う。

しかし、この作品をオンダーチェの最高傑作と評価する方がいる程本書は素晴らしい。

言い表すのは大変難しいが、読めば読むほどに理解と味わいが増す感じだろうと思う。

 

こんな作家(作品)は稀有な存在でないだろうか?

いつか再読したい一冊である。

 

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