「逆さまゲーム」アントニオ・タブッキ著・・・★★★☆
本書は、現代イタリア文学の旗手アントニオ・タブッキが、見事に「逆さまゲーム」でありながら、頭脳的なゲームにおわることなく、ふかい人間的な感動をともなう世界をノスタルジックに描く。
現在、日本で知られている、イタリア文学作家といったら極少数だろう。
各国の文学についてウィキペディアで調べても、メジャーなイギリス、ロシア、ドイツ、フランス、アメリカなどと較べると、その人数や文学史などの情報量には各段の差がある。
そんな中で、タブッキは日本語訳も多く、日本では一番人気のあるイタリア作家ではないだろうか。(他にはイタロ・カルヴィーノか?)
私は過去に3冊の著作を読んでいるが、3冊とも非常に面白く、その作風に魅了された数少ない(?)ファンの1人である。
さて、本書であるが、著者の3作目の作品(1981年)で、11篇からなる短編集である。
以前私が読んだ3冊(「遠い水平線」「供述によるとペレイラは・・・・・・」「インド夜想曲」)と較べると難解(特に文章が難しい訳ではない)というか、「ヘッ?」と言う感じでどう捉えたらいいのか?オチが良く分からない作品集だった。
上記の3冊はどれも違う作風だったが、これもまたそれらと違う作風である。
訳者あとがきには、
「反対側に立つ」ことによって、タブッキは私たちが日常、こうにちがいないと思い決めていることを、ぐるりと裏返してみせ、そのことによって、読者はそれまで考えてもみなかった日常の裏側に気づかさせられ、あたらしい視点の自由を獲得することになる。
。。。とあるが、残念ながら私にはその自由を獲得できなかった。(x_x;)
こんな事にはめげずに、これからもタブッキは読んでいきたい作家である。
逆さまゲーム (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
Amazon |