令和2年10月24日(土)14:30~、31日(土)14:30〜、上野ストアハウスにて。

原作/浅田次郎「獅子吼」(「獅子吼」文春文庫所収)
脚本・作詞/シライケイタ(温泉ドラゴン)
演出/和田憲明(ウォーキング・スタッフ)
音楽/小澤時史

美術/塚本祐介
衣裳/小泉美都
振付/前田清実
照明/本間千鶴(ライトシップ)
音響/横張史靖(キャンビット)
歌唱指導/山口正義/藤森裕美(イッツフォーリーズ)
方言指導/多田純也(ただじゅん企画)
人形製作/吉川 潔(パネンカ工房)
演出助手/米谷美穂(イッツフォーリーズ)、山﨑総司
舞台監督/澤 麗奈(オブリガート)

宣伝写真/岩田えり
宣伝ヘアメイク/吉池アサノ
宣伝イラスト/Toshi
題字/璃奏
制作/鈴木彩子(イッツフォーリーズ)
プロデューサー/𡈽屋友紀子
主催・企画・制作/株式会社オールスタッフ  

出演/
風神チーム:井上一馬、中村翼、石井雅登、保可南、南保大樹
雷神チーム:石鍋多加史、松村桜李、小原悠輝、山崎美貴、中村繁之
共通:大川永、脇領真央、小川夕姫

概要/
浅田次郎の小説を和田憲明演出により舞台化

「決して瞋(いか)るな。瞋れば命を失う」
死を待つばかりの老獅子の前に現れたのは兵士となった、かつての飼育員だった

原作は2016年に刊行された浅田次郎の小説で、オールスタッフ(イッツフォーリーズ)公演では、「天切り松」「月のしずく」に続き、3作品目の舞台化となります。脚本を温泉ドラゴンのシライケイタに、演出をウォーキング・スタッフの和田憲明に依頼。また音楽を小澤時史が担当し、浅田次郎の切ない物語を音楽で包み込みます。激しい瞋り(いかり)を内に秘めた獅子と人間の、哀切と尊厳が胸に迫る作品です。
(公式サイトより)


何度か来てるはずなのに上野ストアハウスまでの道順がいまいち自信がないのは、まあ安定のポンコツぶりではある。地図を見て歩いてみればそれほど複雑な経路ではないはずなんだけどね。

そもそも大きめの駅で目的の出口に無事たどり着けるかどうか、その辺りからあやしい。

それでもなんとか無事会場に着き、階段を降りて地下の会場に入る。



さほど広くないステージだけれど、奥行きを生かした立体感のある美術。下手奥には生演奏のためのスペースがあるようだ。

戦時下の動物園。戦争中の人々の歌声と老いた獅子の独白から物語が始まる。

獅子の独白は文学的で、原作の文面を生かしたものと思われた。

父の教え。故郷の草原。捕獲されて異国の動物園での暮らしが始まり、そこでも父の教えを抱き続けていること。

「けっして瞋るな」

怒りの感情は周囲に伝わる。それを感じて獲物は逃げる。生きるために、喰うために、怒ってはいけない、と。

獅子の妻は別の動物園で生まれ、彼の元へ連れてこられた。草原を知らない彼女は彼に故郷の話を乞う。

原作では具体的に触れられない草原の様子が歌とダンスで描かれていく。

さまざまな生き物たちの姿、吹き渡る風。

ミュージカルではない。音楽劇なのだという。どう違うのか正確にはわからないけれど、ストレートプレイとは異なる形の表現が、舞台上にサバンナを生き生きと描き出していた。

この場面以外でも、演奏のお二人とコロスのお三方を中心に、音楽とダンスで多くのものや想いを表現していく。

戦争という理不尽の中で、物語はしだいに不穏な時代を浮かび上がらせていき、動物も人間も追い詰められていく。

助けようとした動物たちを自らの手にかけなくてはならなくなる元飼育係の若者。

戦争という理不尽の中で、動物も軍人もそれぞれの矜持と愛情を試される。

浅田次郎の短編小説を音楽劇にした脚本と演出の手腕、少数先鋭のキャスト陣も見事だった。

拝見できてよかった。

観終わってしみじみと思った。




土曜日に、あきた芸術村に行ってきました。

現在わらび劇場で上演中のミュージカル『空!空!!空!!!』が、年内は11月22日まで終了なので、その前にもう一度観ておきたかったのです。

この日は午前公演で10:30開演。栃木から間に合うように行くには、自宅を朝6時前に出なくてはなりません。日帰りですから特別な用意は必要ないのですが、関東よりは寒いかしら、などと多少は考えたりもします。

そんなこんなで無事に間に合うよう家を出て地元駅のホームに着いてから、傘を忘れたことに気がつきました。仙北市は雨の予報だったで、持って行こうと思ってたのですが。

まあいいや、と思いつつ新幹線を乗り継ぎ、角館駅へ。まだ降ってはいませんが微妙な天候です。

とりあえずシャトルバスに乗ってそのまま劇場前で降ろしていただきました。


ミュージカル『空!空!!空!!!』、3度目の観劇。

バスで到着した団体客でロビーが賑わっています。自分でも買い物をしたりコーヒーを飲んだりして、開演時刻を迎えました。

団体の方々も私語もなく熱心にご覧になっていましたが、ヒロインが飛行機学校を辞めさせられそうになった場面で、小さく「がんばれ!」とつぶやく声が聞こえた気がしました。


秋田初の女性飛行士 及位ヤエさんの若き日の情熱と奮闘を描くミュージカル。

個性的な登場人物による歌とダンスで綴られた物語は、ヒロインの夢に向かう強さと両親の愛情、飛行機乗りたちの矜持を描いて胸に迫りました。

舞台の詳しい感想は、また別の記事で書きたいと思います。


観劇後、気になっていた場所へ行ってみました。


芸術村庭園内の東屋にあるWAROCK(ワロック)交換所。

ワロックというのは、絵を描いた石をいろんな場所に置いたり隠したり交換したりする遊びだそうです。

海の石や川の石など水辺の石は表面がなめらかで描くのに適しているのでしょう。描かれる前の海の石や川の石も用意されていました。

9月末にここに来た時には、庭園内のあちこちにいくつか置かれていたのですが、いつのまにか立派な交換スペースができていました。



石の形もそこに描かれるものもさまざまで、いいなぁ、面白いなぁ、と眺めつつ持ってきてしまうのは気が引けていたのですが、石を置きにいらしたと思われる方から直接いただいたので、うれしくて大切に持って帰ってきました。



手にしてみると意外に軽くて、海の石というのは他の場所の石とは成分(?)が違ったりするのかしら、と考えたりしました。

次に行く時には下手なりに何か描いて置いてきてみたいなぁ、と思ったりしています。


次に向かったのは、お食事処ばっきゃ。


まずは新発売の福ふくホップをグラスでいただきました。


爽やかで呑みやすくとても美味しいビールでした。


で、ばっきゃでの主目的なこちら。

最近メニューに加わったラーメン4種のうち、


鷄パリパリラーメン。



塩ベースの透き通ったスープは、サッパリした中にしっかりした旨味が感じられました。

名前のとおり表面をパリッとさせた鶏はボリュームたっぷりで満足感高し。

次の機会にはまた別のラーメンにチャレンジしたいと思います。



ラーメンを食たあとは、芸術村と道路ひとつ隔てたロードサイドに出店中のソフトクリーム屋さんに行ってきました。


芸術村名物のブルーベリーをふんだんに使った贅沢な美味しさでした。


続いて向かったのは田沢湖ビールレストラン。こちらで開催される『秋のうめもんけ』を観るためです。

秋田の美味しい発酵食品とわらび座得意の民謡民舞で元気になろう、という催しです。

お食事と温泉と公演のセットがお得なのですが、ばっきゃのラーメンを食べたかったので、この日は公演だけ申し込みました。



尺八やフルート等の演奏や某コーナーの声などを担当された小沢剛さん。

演奏された楽曲のうち何曲かは小沢さんの作曲されたものだったりもしました。



お琴や三味線、その他の演奏を担当された黒木いづみさん。この日は写真のとおり鍵盤ハーモニカも演奏されていました。



進行や歌舞を担当されていた神谷あすみさんと上平美咲さん。



民謡民舞やオリジナルの楽曲に、なまはげどんの登場などもあって楽しい時間を過ごさせていただきました。


いつのまにか秋晴れの青空が見えて、紅葉がひときわ鮮やかでした。




芸術村だけでなく、角館の武家屋敷通りも美しく色づいています。



(某所に寄ってみたところ都合によりいつもより少し早めにしまっていたようで、目当ての方にお会いすることができなくて残念) 







写真ではわかりにくいですが、わらび劇場も武家屋敷通りも、夏頃と比べて人出が増えているように見えました。

感染症の流行状況はまだ先が見えませんが、各種施策の効果もあるのでしょう、ここばかりではありませんが団体旅行や観光の方々は確実に戻りつつあるようです。

あいかわらずバタバタと欲張りな日帰り旅でしたが、お天気にも恵まれ、おなじみのミュージカルや楽しい小公演に加えて美味しいものや綺麗なものを堪能する1日となりました。

お目にかかれた皆さま、気にかけてくださった皆さま、ありがとうございました。


感染症にも交通事故にも気をつけて、元気でまたお会いできる日を楽しみにしています。
令和2年10月24日(土)18:00〜、あうるすぽっとにて。

作/菅専助・若竹笛躬
監修・補綴・上演台本/木ノ下裕一
上演台本・演出・音楽/糸井幸之介(FUKAIPRODUCE羽衣)
音楽監修/manzo
振付/北尾亘
舞台美術/島次郎、角浜有香
照明/吉本有輝子
音響/小早川保隆
衣裳/大野知英
ヘアメイク/須山智未
補綴助手/稲垣貴俊、山道弥栄
演出助手/岩澤哲野、山道弥栄
演出部/川村剛史* 
舞台監督/大鹿展明
制作/武田知也、宮崎麻子*、本郷麻衣
 *ロームシアター京都

出演/
玉手御前:内田慈
俊徳丸:土屋神葉
浅香姫:永井茉梨奈
次郎丸:永島敬三

奴入平:谷山知宏
羽曳野:伊東沙保

高安通俊:山森大輔
高安通俊 妾:石田迪子
次郎丸 家来:飛田大輔

おとく:西田夏奈子
合邦道心:武谷公雄

あらすじ/
大名・高安家の跡取りである俊徳丸は、才能と容姿に恵まれたがゆえに異母兄弟の次郎丸から疎まれ、継母の玉手御前からは許されぬ恋慕の情を寄せられていた。そんな折、彼は業病にかかり、家督相続の権利と愛しい許嫁・浅香姫を捨て、突然失踪してしまう。しばらくして、大坂・四天王寺に、変わり果てた俊徳の姿があった。彼は社会の底辺で生きる人々の助けを得ながら、身分と名を隠して浮浪者同然の暮らしをしていたのだ。そこに現れる、浅香、次郎丸、玉手と深い因縁を持つ合邦道心。さらに、誰にも明かせない秘密を抱えたまま消えた玉手が再び姿を見せた時、物語は予想もしない結末へと突き進む。
(公式サイトより)



昨年3月に拝見した作品の再演。

もう一度観たいという願いが叶い、しかも花組芝居や柿喰う客からの新キャストもありで、なおさら楽しみにしていた。

そしてその期待を上回る、ボリュームも内容もアップした作品となっていた。

これは俊徳丸伝説というより、やはりタイトルの示すように合邦の娘 お辻の物語なのだ、と改めて思った。

睦まじい父と娘に訪れた悲劇。随所で過去の幸せな時間が描かれて、いっそう胸が痛む。

玉手御前ことお辻役の内田さんや合邦道心役の武谷さんをはじめ、魅力的なキャストが揃っていてどの場面も目が離せなかった。


壮絶な物語に組み込まれたゆるやかなメロディと動きによる糸井さん独特の世界観。

都会の片隅のエアポケットのような孤独や見上げる夕陽に滲む涙。北尾亘さんの振付が歌とともに場面ごとの想いを形にしていく。

台詞やメイクは歌舞伎調、歌詞は現代の言葉、衣装は今風、そんな独特のバランスが違和感なくまとまって、ここにしかない世界が舞台の上に現れる。

場面に応じて四角柱を出演者が動かしていくシンプルながら動的な美術が、流転する人々の物語を彩っていた。



木ノ下歌舞伎のレパートリーとして、上演し続けて欲しい作品だった。

もっとも、木ノ下歌舞伎には「また観たい」と思わせてくれる名作が他にたくさんあるのだけれどね。


昨日、インフルエンザの予防接種を受けてきました。例年より少し早いですが、新型感染症のこともあるので。

この冬、感染症の流行はどんなふうに推移するのでしょう。ニュースを見て楽観と悲観の間を行ったり来たりする日々です。

……ま、その割に出歩いてますが(汗)

でも飲み会どころか家族以外の人と食事することもほとんどないし、家族との食事だって器を分けるようにしたし、毎朝検温してるしもちろんマスクと手洗いは欠かさないし、自分なりに気をつけてはいるつもりです。

そもそもインフルエンザの予防接種や流行期のうがい手洗いは例年のことで、それもこれも風邪やインフルエンザで観劇に支障をきたしたりしないためなので、今年はなおさらです(いや、社会人なんだからもちろん仕事その他のためでもありますけど←)。


さて10月は、

serial numbers『all my sons』
劇団扉座『リボンの騎士2020〜鷲尾高校演劇部奮闘記〜』Aチーム・ Bチーム
miunaプロデュース『ダウンワードスパイラル』
木ノ下歌舞伎『糸井版 摂州合邦辻』
音楽劇『獅子吼』雷神チーム・風神チーム
青年団リンクやしゃご『ののじにさすってごらん』

と8回劇場に足を運びました。

加えて、山口恵利佳さんの2ndソロライブ『Bel suono』にも参加しました。

台風で中止になった公演(野外能)もあり、予定よりやや少なめ。そのくせ中旬から下旬にかけてはいろいろ重なって、気になりつつ観られなかった公演もたくさんありました。


で、11月は……

個人的にはなんていってもあやめ十八番です。

年に一度の公演ですもの、お祭りみたいな心持ちです。仕事の繁忙期と重なるため千秋楽に伺えないのが残念ですが、それでも何回かは伺える予定ですので、じっくり拝見してきたいと思います。

その他わらび座の公演でいくつか遠征の予定があって、お馴染みのあきた芸術村お食事処ばっきゃでラーメンを食べたり、初めての北陸新幹線で富山へ行ったりするつもりです(もちろん観劇が主目的です)。

配信は意外と観るのが難しいことに気づいたのであまり手を出さないようにしたいのですが、そのくせ日程の都合で観られなかった舞台についてはせめて配信して!?と思ってしまったりもします。

観られなかった舞台ではないですが、今月もなんだかんだで2本ほど配信の視聴を予約しています。


こうやっていろんな舞台を観ることがいまは何よりの楽しみだし、その感想をTwitterやブログに書くことも自分にとって大切なことです。

第一に、自分自身の覚え書きとして。

第二に、同じ舞台を観た方と(ねー、あそこがすごかったよねー)的に、観てきた芝居の話題を共有するため。

そしてもうひとつ自分にとって大切なのは、創り手の方々への拍手の延長としての感想です。

舞台を拝見し客席で多くのものを受け取った、その感謝と愛情を少しでも形にしたい、と。

SNSが普及し、こういう自己満足めいたネット上の喝采が創り手に届くこともあって、それはもう望外の幸福と言えるかもしれません。








秋らしい画像を写真フォルダから物色して貼ってみました←

関東ではこのところ爽やかな秋の気候ですが、きっとすぐに寒くなってくることでしょう。

寒暖差や乾燥や感染症に負けず、仕事や家庭やその他もろもろの浮世の義理ともオトナとして折り合いをつけつつ、これからも末永く(その時々で可能な範囲で)元気に劇場に通えますように。

そしてなるべく早く新型コロナウイルスによる感染症の流行に終止符が打たれますように。
令和2年10月11日(日)14:00〜、16日(金)19:00〜、すみだパークシアター倉にて。

脚本・演出/横内謙介
原作/手塚治虫
共同演出/鈴木里沙
振付原案・協力/ラッキィ池田・彩木エリ(イカキック)

美術原案・協力/金井勇一郎(金井大道具)
舞台監督/大山慎一(ブレイヴステップ)
舞台監督助手/大山潤(ブレイヴステップ)
照明/岡崎亘(ASG)
音響/青木タクヘイ (ステージオフィス) 
音響操作/中川綾乃(ステージオフィス)
衣装原案・協力/木鋪ミヤコ・大屋博美(ドルドルドラニ)
映像/hiko
チラシ表デザイン・タイトルロゴ/上谷季美子
企画協力/手塚プロダクション
票券/そのださえ(扉座)
制作/赤星明光×田中信也(扉座)
製作/扉座

出演/
中島親弘:三浦修平 (A)、小川 蓮 (B)
池田まゆみ:北村由海
芹沢塔子:小笠原 彩
花本小百合:伴 美奈子
中里好子:中原三千代 (A)、江原由夏 (B)
奥村里香:藤田直美 (A)、鈴木崇乃 (B)
飯室直美:塩屋愛実
中丸沙知:菊地 歩
安達美穂:佐々木このみ
長橋千草:渡邉美玖
我孫子さやか:大川亜耶
牧内 順:野田翔太 (A)、翁長志樹 (B)
小田和夫:新原 武
菊地原 聡:紺崎真紀
木下生徒会長:累央
サファイア:砂田桃子
フランツ王子:カケフダタクロー
ヒョウタンツギ:岡森 諦
ジュラルミン大公:上原健太 (A)、犬飼淳治 (B)
ナイロン卿:早川佳祐 (A)、鈴木利典 (B)
メフィスト:松原海児 (A)、山川大貴 (B)
応援団員:嶌田リョウ、山内信人
生徒会副会長:鈴木里沙(映像出演)

あらすじ/
県立鷲尾高校演劇部は女子だけの弱小演劇部。
しかし、その部が創部以来初めて、本気になって、いつも彼女たちをバカにする他の生徒たちを見返そうと立ち上がる。
作品は手塚治虫の漫画を部員の池田まゆみが脚本化した『リボンの騎士』。
おりしも暴力沙汰で取り潰しが決まった応援団から、リーダー部長の男子が王子様役で参加してくれることになった。
とはいえプライドも根性もない演劇部員たち。
次々と襲いかかる困難にひたすらに打ちのめされてゆく。
果たして、こんなことで本当に皆を見返すことができるのか……
『リボンの騎士』を上演しようとする演劇部の部員たちが、現実の厳しさを噛みしめつつも友情を結び合い、また淡い恋に揺れながら、少しずつ大人になってゆく姿を、仮面を被って夢見る女の子の素顔を隠し、勇ましく闘うリボンの騎士・サファイアのイメージと重ねつつ描く、青春ファンタジー。部員たちを優しく見守る妖精的な存在として、リボンの騎士のキャラクターたちも登場する。
(公式サイトより)


このご時世に、配信もせずクラウドファンドもやらず、ただ粛々と感染症対策に心を配りつつ劇団員中心の芝居を打つ。

もちろん配信もクラファンもそれぞれに意義があると思うし、扉座だっていずれやるかもしれないけど。

今回の公演に限って言えば、その愚直とも言えそうな演劇への希求が何よりも印象に残った。


配役が発表されたとき、まず一番に(わあ、楽しみ!)と思ったのは、北村さんの演じる池田まゆみだった。これまで扉座の劇団員が演じたことのなかった役ではないだろうか?

主役の中島くんは、一昨年と昨年同役を演じた三浦さんと小川さんで、それぞれ間違いない演技を見せてくれるはずだ。

トーコを演じるのは小笠原彩さんで、昨年のサファイア姫で見せたキラキラした笑顔を思い出し、なるほど、と思った。

岡森さんのヒョウタンツギとか、累央さんの生徒会長とか、新原さんの応援団長などのキャスティングには、なるほどそうきたか!!と思ったり。
(そういえば、いわゆる自粛期間に山中崇史さんプロデュースで扉座過去作品のオンラインリーディングをなさっていたのだけれど、そのときの『無邪鬼』のダブルキャストも相当に面白い組み合わせだった。こういうのも同じ劇団を何年か続けて拝見しているからこその面白みかもしれない)

さて、けだまこと池田まゆみ役の北村さんである。

あー、これは観たい、楽しみだ!!と反射的に思ったし、実際に拝見して期待以上に好みだった。素直になれない感じや屈折してるくせに思い切りのいいところなども生き生きと等身大に演じて、少女の子ども時代との決別が美しく描かれていた。

そして、何度か観ている戯曲なのに、今回初めてまゆみの決断に作家の横内氏が投影されているように感じた。考えてみれば、人に誘われて廃部寸前の演劇部に入り劇作家を目指すという彼女に、横内氏の経歴を連想するのはファンとして当然のはずなのに。

彼女だけでなく、今作では学園ものという枠組を越えて何かを創ろうとする人々すべてを応援する物語のように見えた。

また今回演劇部員の個性がひときわ印象に残った。

オーディションキャストの公演では初見の役者さんが多いため登場人物の個性を把握するまでに時間がかかったけれど、今回は違う。(もちろん、どの公演でも花本先輩はキャラが立っていたけれど)

2年の顔ぶれがとてもいい。部長として部をまとめようとする中里、しっかり者で思いやりもある里香、直情的なけだま、そして2年みんなを演劇部に引き込んだトーコ。

観ていてごく自然に、そういう2年生たちと目線が重なる。

Aチームでは中原さんの苦労性なリーダーシップと藤田さんの親近感を感じさせる雰囲気が、Bチームでは江原さんのいかにも頼もしく親しみやすい感じ、鈴木さんの気配りや思いやりがそれぞれに素敵だった。

小笠原さんの演じるトーコは、気丈さや明るさの中に張り詰めたもろさも感じさせた。まゆみに向ける想いのうちに友情だけでない繊細な感情が含まれている気がした。

演劇部とともに公演を目指す中島は、三浦さんと小川さんのダブルキャスト。ヤンチャな雰囲気がいかにもハマり役でまゆみともバランスのいい小川さん、誠実さと真摯さに説得力があり、劇中劇の王子もお似合いだった三浦さん、それぞれに以前同じ役を演じられた時より更に魅力を増していた。

1年は1年でキレッキレだ。

可愛い顔をしてハッキリ言っちゃう飯室を中心に、飯室とつるんでちょっとやさぐれ気味の中丸、花本先輩推しのマジメな安達、トーコ推しの大人しめな長橋、パワフルな雰囲気の我孫子、一人ひとりの個性と1年全体の雰囲気がバランスよく伝わってきた。

飯室を塩屋さん、中丸を菊地さん、安達を佐々木さん、我孫子は大川さんが演じた。

長橋を演じた渡邉美玖さん、そして応援団の1年生を演じた嶌田リョウさん、山内信人さんは研究生、通称研二と呼ばれる昨年1年間の研修生を経て2年目に残った方々だ。

扉座では今年度は感染症の流行により新規研究生を取らなかったけれど、こうして昨年度から継続してがんばってらっしゃる方々がいるのを見てうれしくなった。

演劇部の話に戻ると、唯一の男子である牧内は野田さんと新人の翁長さんのダブルキャストで、同じキャラながらだいぶ印象が違っていて面白かった。

それぞれ「演劇LOVE」「演劇魂」と書かれたTシャツを着ていたりする演劇オタクで裏方専門の優しい彼は、一度仲間を離れていざと言うときに戻ってくる、美味しい役回りだ。

この牧内の行動などは、考えてみれば多くの物語で見かける定番的なつくりである。

もちろん、心に触れるからこその定番だ。気持ちよく決まる物語の形を知り尽くして、詰め込んであるのだ。

そういう美味しい展開がコレでもか!と詰め込まれ、2時間半が驚くほど濃厚だった。

応援団長(になるはずだった)小田を新原さんが演じて、男気あふれる言葉や行動でみんなを励まし続けた。

旗手部長の菊地原は一昨年小田を演じた紺崎さんが応援団らしい迫力のある雰囲気で演じた。

木下生徒会長を演じた累央さんは、登場から独特の気弱そうな雰囲気とクールさで、演劇部のピンチに思わず手を貸す場面が際立った。

この作品では、演劇部や(元)応援団部の部員たちをはじめとする高校生たちの日常と重ねて、まゆみの脳内で活躍する手塚治虫さんの『リボンの騎士』の住人も活躍する。

サファイア姫を演じた砂田さんはすでに一昨年同役を演じていて間違いのない凛々しさ美しさだし、フランツ王子は唯一の客演であるカケフダタクローさんで、ダンサーらしい優美な身のこなしやエレガントさ以上に、精悍さと色気のにじみ出るフランツだった。

岡森さんのヒョウタンツギは軽妙さと独特のペーソスとともにまあくんへの愛情を感じさせた。

ジェラルミン大公、ナイロン卿、魔人のダブルキャストは、顔ぶれに合わせて演出もまったく異なっていた。

スーパー歌舞伎にご出演なさっていた上原さん、早川さん、松原さんのAチームは、歌舞伎仕立てでつけ打ちや八双飛び、隈取りなども取り込み、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』を彷彿とさせる場面もあった。

もう一方は犬飼さんの大公と鈴木利典さんのナイロンという、もうこのお二人だけで芝居一本作ってください、観たいから、と言いたくなるような濃いコンビと、野球選手のモノマネで座をさらった山川さんの組み合わせでこちらも面白かった。

冒頭。

モニターから流れてくる応援団部の次期団長らの声。客席近くで大声を発するのを避けているのだ。

あるいは、舞台後方を大きく開いたり、場面によっては大きなビニールシートを客席と舞台の間に張ってみたり、工夫を凝らした感染症対策を行うとともにそれをパフォーマンスの一部として取り入れていた。

物語終盤。発表会当日になってもトラブルは続き、1人舞台裏で奮闘するまゆみのピンチに、リボンの騎士のキャラクターたちが登場し彼女とともにセットを支える。

キャラクターたちは知っている。これでもうまあくんとはお別れであることを。まゆみは子ども時代を彩ってくれた夢の世界の住人たちと別れ、自分の道を踏み出していくのだ。

劇作家になる、という夢に向かって。

それでも、彼女がこれから生み出すたくさんの物語の底に、サファイアやフランツやヒョウタンツギの面影が潜んでいるかもしれない。


この公演の正式なタイトルは、

すみだパークシアター倉 こけら落とし公演 劇団扉座第67回公演 『リボンの騎士2020~県立鷲尾高校演劇部奮闘記~ ベテラン版 with コロナ トライアル』

……という長いものだ。

ここに書かれているように、新しい劇場のこけら落とし公演だったそうだ。




川と公園に隣接する落ち着いたロケーションの劇場だ。

入口から受付、ロビー、会場へと移動する中でも細やかに感染症への対策が取られていた。

会場内に入ってみると見覚えのある椅子が並んでいる。敷地内にあったすみだパークスタジオ倉から移設したものだろう。

椅子とともにたくさんの舞台の記憶もまた、新しい劇場に引き継がれたのかもしれない。


ある演出家がインタビューで「今は採算なんか取れない」と答えていた。「それでも、劇場が自分たちの居場所だからやるのだ」と。

どんなに対策しても、どこで誰が感染してきてしまうかわからない。どうがんばってもリスクはなくならない。何もしないのが一番安全なのだけれど、そしてやっても報われることは少ない(特に金銭的な面では)けれど、それでも舞台を創ろうとする人々がいる。

扉座主宰の横内謙介さんが、Twitterにこんなつぶやきをなさっていた。



冒頭にも書いたように、配信もクラウドファンドもやらず、ただ愚直に劇団員中心の芝居を創る、ある種の信仰めいた(という趣旨のことを主宰自らおっしゃっていました)公演で、しかも物語と演劇の圧倒的なエネルギーを見せてくれる。

観客としてはもう信じてついていくだけだ。

演劇人にとって……だけでなく観客にとっても、そこは自分たちの居場所であり、いま行かないとなくなってしまうかもしれない、大切な場所なのだ。

さまざまな立場、さまざまな考え方があるだろう。少なくとも自分に可能な範囲で劇場に行き続けたい、そう思った。