夜の森
月明かりも届かぬ真っ暗な森
静寂の中で風の音が聞こえる
少し冷たくなった空気を吸い込んで
熱を失った息を吐き出した
何に対して言っているのか
最早解らないまま繰り返す「大丈夫」
魔法の呪文は人間には扱えないらしい
目を 耳を 口を
塞ぎ込んで何も知らない振りをした
それでも事実は体に染みこんできて
何時かの嘘を 罪を暴き立てた
教えてほしい
貴方の住むその世界の光は
どれくらい明るくて
どれくらい公平なのか
それともその光は
既に偽物になってしまっているのか
それでも貴方は
「光がないと生きていけない」
と言うのか
裸足で歩く森の中
痛みなどもう忘れてしまった
何処までも赤く伸びた線だけが
生きてきたその証
生きているその証
落ち葉を踏みしめる乾いた音が
耳に優しく響く
姿の無い梟の声に従って
闇の中を歩き続ける
ただいま
忘れようとした
乗り越えようとした
捻じ曲げようとした
でも僕は
あの曲を聴く度
君を思い出してしまう。
どんなに頑張っても
君が頭の中から消えることは無いらしい。
絶望的だよね。
大馬鹿だよね。
君はもう何処にも居やしないのに。
屋上から飛び降りようとしたあの時
最期の記念にと借りたままだったあの映画
あれさえ観なければきっと今頃
僕は君と一緒にこの世から消えていた筈なのに。
実を言うとさ
悲しくはないんだ。
全然。
逆に
思い出すと
笑ってしまう。
「ただいま」
って。
誰にも届かない言葉だけど
それでいいんだ。
君にはもう二度と会えない。
だけど君の記憶は僕から消えない。
だから君を思い出した時は
「ただいま」って笑うんだ。
そうすると君は呆れた顔をして
それから笑ってくれるんだ。
僕が死のうとした時
代わりに死んでしまった君。
君にもあの映画
観てほしかったな。
生きるって
凄い大変だけど
死にたくなる程大変だけど
時々素敵な物に出会える。
僕はその映画に救われた。
『アカルイミライ』
自殺する前に観るには
場違い過ぎるタイトル。
でもね
これ観て 大泣きして
すっきりしたんだ。
もう少しだけ
生きてみようって思えた。
未来は明るくなんかないけど
それどころか絶望だらけだけど
生きるっていうのはきっと
そういうものだから。
『WILD ADAPTER』の『Wandering』
一緒に聴いた曲。
君と僕の特別な曲。
今日ランダム再生してたら流れたんだ。
だから今朝は
「おはよう。ただいま」
ほら、君は笑ってくれる。
笑ってくれる。
叫び
忘れていた。
否
諦めてしまった。
僕が何処で何をどう叫ぼうと
誰にも届かないと。
僕の声になってくれていた人は
自らその命を絶った。
苦しいと泣いていた
あの人を助ける術を
僕は持っていなかった。
あの頃の僕が持っていたのは
人を 自分を 周りを傷付ける為の
言葉だけだった。
あの人の為に泣いてあげることも出来ず
僕はただ自分を呪った。
そして
自分の言葉を一度封印した。
傷付ける為の言葉なんて
もう要らなかった。
時が経ち
僕は再び言葉を手にした。
けれどそれは
全てあの人への謝罪と
全ての人へ対しての
懇願とあらましになった。
どんな言葉を選ぼうと
全てあの人へと向かっていく。
もう何処にもいない
消えてしまったあの人へ。
そしてその悲しみの言葉は
幾人かの人に形を変えて届いた。
僕が叫んでも
何も変わらなかったあの頃。
僕の嘆きが
伝わるようになった今。
だけどあの頃の思いは
封印した言葉達は
今でも僕の中だけで生きている。
そしてそれは
外の世界には出してはいけない。
もう誰も傷付けないように
もう誰も傷付かないように。
この痛みは
あの人と僕だけの
決して消えない罪の証だから。
オンライン
僕は基本オフラインの人間だ。
携帯はマナーモード
ノートPCは鞄に仕舞いっ放し
テレビもインターネットには繋がない。
それは何故か。
答えは単純明快で
「人間が怖いから」
である。
よく気の利く友人が生存確認メールをくれるが
そもそもそのメールに気付くのが翌日だったりする。
何故なら携帯自体は常時オンラインなので
怖くてベッドの隅に放ってあるから。
人間恐怖症は今に始まった事ではないのだけれど、
引きこもりになってから状態は悪化の一途を辿っている。
それにはきちんとした動機があり、
『学生に属さなくなってから相次いだ人間関係の失敗』
である。
何とか社会人になろうとして
気が付いたら鬱病だった。
更にその鬱病はサブで
メインは統合失調症だった。
兎に角人間不信に走った僕は
ありとあらゆる”マトモな人間”を排除した。
彼らは僕が働いていない事を良しとしないし、
病気に対しての知識が無い為次々と地雷を踏んでくる。
「精神病って気の持ちようじゃない?」
それが彼らの主張である。
そんな外道と関係性は持ちたくない。
しかし、この社会はそんな外道の方々によって回っているわけで
僕が貰っている年金もそんな方々からのお金なのだ。
そんな理由もあってあまり責められないのが現状である。
次に困ったのが”病人”。
彼らは時に”自分と症状が同じ場合、価値観も同じである”と勘違いをする。
つまり、いきなり
「貴方もこう思いますよね?」
とくる訳だ。
ところが僕は一般的な病人とは違う価値観らしいので話が噛み合わない。
その為病人との縁も随分切った。
マトモな人間も病人も駄目になった僕は
引きこもる以外に方法を見つけられなくなった。
その内今度はオンラインである事さえも怖くなり
結果的にとても閉じた世界で生きているわけである。
人間は傷付け合う生き物だと誰かが言っていた。
それが本当なら、僕はもう人間でいたくない。
別に傷を舐め合いたいわけでもないが
態々傷付け合って何が楽しいのか解らない。
実際僕は色んな人に傷付けられたし
多分沢山の人を傷付けたのだろうとは思う。
だからこそ僕は今引きこもっている。
誰も傷付けず
誰にも傷付けられない為に。
しかし引きこもっているという行為が
きっと誰かを傷付けているのだという事も
解ってはいる。
それは本当に申し訳ないが
僕はもう社会には出られないくらい
醜い傷痕を持ったトラウマの塊なので
どうか許して頂きたい。
道
最後にあの人を見たのは
何時の日の事でしょう。
学生時代に使っていた道を
僕は今でも歩いていて。
それはほんの少し遠回りだけど
何時かあの人に会えるような気がして。
会っても
きっと
気付かれないし
気付いても
無視
するんだろうな、あの人は。
それ程の事を
僕はしたのだ。
それを今でも後悔しているが
間違ったとは思っていない。
だってそうしなければ
僕は変われなかったから。
あぁ、そうか
そうやって人を踏み付けてきたから
蜘蛛の糸が切れて
僕は地獄へとやってきたのか。
果たして此処が地獄なのか
それにしては生ぬるいような気もするが
とりあえず
僕は数多の病に蝕まれ
原因不明の体調不良に常時侵され
苦しんではいる。
これは呪いか報復か
まぁ結果に違いは無い。
僕は我侭で自己中心的だったから
きっと沢山の人を傷付けたし
恨まれもしてるんだろうな。
それは弁解の余地も無い。
それでもあの頃
生きるのに精一杯だったあの頃は
間違いなく
僕が壊れていくきっかけだったんだと思う。
そんな事をグルグル考えたくて
僕はまたあの道を通るんだ。
消せない過ちと
消したくない思い出の為に。