ネガティブ最前線 -25ページ目

思い出

目まぐるしく廻るこの世界に

あれから何度目かの寒さがやってきました。

外に出ると風が冷たくて

思わず首をすぼめてしまいます。


右手にあった貴女の温もりは

今はもう思い出すのも難しく

それでいてつい昨日まで此処にあったようで

悲しくなってつい景色が滲みます。


これまで何度も

否、毎日

貴女を忘れようとしてきました。

貴女が何も臆せずに

空の向こうに旅立てるように。


貴女との思い出の品を

丸ごと部屋から追い出して

その部屋を別の物でいっぱいにして

二度と入れないようにして

それでもまだ

貴女の残り香が鼻をくすぐるのです。


だからもうやめにしました。

僕は貴女を忘れない。

生涯思い出を引きずって

過去に生きていこうと決めました。


僕の未来にはもう何も無いのです。

貴女を失ったあの日に

僕も死んでしまったのです。


だからさよなら、未来の僕。

僕はあの人と一緒に

永遠の時を過ごします。


春には出会った日のことを

夏には初々しい日のことを

秋には寄り添った日のことを

冬には失った日のことを


ずっと

ずっと思い出して

貴女と二人で生きていきます。


そして死ぬその時まで、ずっと貴女といたいのです。

それが僕の幸せだから。

イツカ

死ねばよかった

貴方がいる内に


誰にも言わないで

独りでそっと

逝けばよかった


年を重ねる毎に

色んな事を知って

死ねなくなった

そんな今です


死ねばよかった

貴方の代わりに


誰にも気付かれず

消えるみたいに

逝けばよかった


貴方の月命日

好きだった花を供えて

また泣いてしまう

そんな今です


何時か貴方の下に逝く時には

笑えるような人生にしたい

出来損ないの夢を見ている

そんな僕です


貴方は待っていてくれますか?

幸せだったあの頃みたいに笑って

笑って。

偽者と本物

切なさは

悲しさの一歩手前。


ずっと前に

封じ込まれた心が

少しだけ氷解する。


痛みや苦しみに

耐えることが当たり前過ぎて

その内そんな感覚は麻痺していった。

そんな幼少期。


今でも

少し放っておくと

心が無くなってしまう。

何も感じてはいけないと

叩き込まれた習慣は

きっと生涯消えないんだろう。


心が無くなると

全てが億劫になる。

そうして過ごす時間は

僕にとっては無駄だけれど

心を持ってはいけない家庭環境だから

仕方の無い事。


自分が何者なのか

それもわからない内から

役柄を与えられて

それを演じてきた。

だからきっと

本物の僕なんてものは

存在しないんだと思う。


役柄を演じるだけの技量が無くて

失敗した時は

兎に角自分を責めた。

だから僕は僕が嫌い。

きっと僕を責める僕も

本物ではないんだろうけど。


結局僕は

一人でいる時も

ゲームや本で

違う誰かに成り切る。

ぽっかりと空いた

本物の僕が座るべき場所を

キャラクターが埋めてくれる。


本物の自分なんて興味が無かったし

いらないと思っていたけれど

色んな事を経験して

漸く僕はそれが足りないが為に

様々な失敗を犯すことになったのだと気付いた。


だから今更だけど

麻痺した感覚を取り戻して

痛みや苦しみを紡いで

本物の自分を描いている。


それはとても醜くて

大嫌いなものだけど

きっとそんな自分も

必要なんだと思う。


自分を好きになることは出来ないし

認めるのも嫌だけど

それも全部ひっくるめて

自分と呼ぶんだろう。


誰にも気付かれないように

こっそりと自分を作っていく。

遠い昔に封印した

本物の自分が

いつか誰かに認められる為に。


麻痺した感覚を

枯れた涙を

取り戻すんだ。

久しぶりに

久しぶりに


死にたい


と思った。


屋上から飛び降りようか

包丁で胸部を貫こうか

近所の踏切まで行って轢かれようか

薬を多量摂取しようか


兎に角死ねるかもしれない方法が

グルグルと脳内を回って。


こんなにも死にたいのに

死んではいけないと言われていることが

とても辛くて悲しくて。


それどころか

自分を傷付けることすら禁止されていて。


どうにもならない衝動を抱えて

真っ暗な布団の中でずっと丸まっていた。


死にたい。

あの人の所へ行きたい。

この世には僕の居場所なんて無い。

もう死ぬ以外に方法が残っていない。


死にたい。

死にたくて死にたくて

誰にもばれないように泣いて

死にたいと泣いて

誰にも言えないままで

曖昧に笑ってみせて

頭の中は死ぬ事だけで。


楽になりたい。

死んで

魂なんて無くて

消えてしまっても

それで構わない。


僕は

もう何も感じたくない

空っぽになって

この空気に溶けてしまいたい。


死にたいんだ


死にたいんだ


死にたいんだ。

『さよなら』

「さよなら」

とても短くて

とても残酷で

とても悲しい言葉


それは、この世に存在する

唯一の永遠


さよなら

さよならなんだ

もうどんなに目を赤くしても

貴方は帰ってはこない


声が枯れる程泣いて

何日も部屋に閉じこもった

知らない内に陽が昇り そして落ちて

それでも現実から逃げようとした


まどろんで浅い眠りに就けば

繰り返される「さよなら」の言葉

夢と現の間が曖昧になるほど

それは残酷な世界になって

僕を蝕んでいく


僕は言えなかった

止められもしないのに

貴方の腕を掴んで。

そしてそんな僕の手を

体温の消えた貴方の手が

優しく振り解いた


微かに微笑んだその瞳には

隠し切れずに落ちる涙

「さよなら」

この世でたった一つの永遠を

貴方は僕に渡した


あの時の微笑が忘れられなくて

あの時の涙が忘れられなくて

僕はただ泣いて 泣いて

それでもさよならだけは

まだ言えないんだ

まだ言えないんだよ。


だから僕の命の続く限り

貴方を二つ目の永遠にしよう

さよならの代わりに


「またいつか」