幸せ
幸せってなんだろう。
生きていて良かったと思えること?
生きていたいって思えること?
それとも、もう死んでもいいと思えること?
俺はずっと死にたがりだった。
小学生の時、塾をサボった日
祖母に張り倒されて踏みつけられた時に
自分はいらない子供なんだと悟った。
父親も僕を怒鳴った。
兄も僕を怒鳴った。
母親は僕を無視した。
「お前はうちの子じゃない」
「お前はいらない人間なんだ」
「お前がいるだけで苛々する」
「お前は見ていて気持ちが悪い」
あの時『自殺』という方法を知っていたら
何一つ迷わずに死を選んだのに。
俺はそんな方法を思いつきもせずに
ただ声を殺して必死に別の自分を演じていた。
あの時死んでおけば
こんなに無様で惨めな思いをすることはなかった。
申し訳ないと懺悔することもなかった。
家庭は円滑に回って
誰も不幸な思いなどしなかっただろう。
今は俺がいる所為で
やることが増えて家族は大変そうだ。
俺はそれを知りながら
見て見ぬ振りで眠りに落ちる。
浅い眠り。呼び起こされるのは過去。
繰り返される悪夢。
それでも眠り続ける自分。
眠る以外の方法が
俺には思いつかない。
死んではいけないというのなら
せめて違う世界の中に居たい。
でもその世界は決まって悪夢で。
現実と悪夢の間で
俺は判別のつかない世界を彷徨う。
いつの間にか幸せなんて探さなくなっていた。
痛みを緩和することだけを考えていた。
少しでも何かで誤魔化せればそれでよかった。
何も感じていない振りをして
へらへらと笑えればそれで充分だったから。
そんなの家族じゃないと言われれば尤もだと思う。
自分がいる家庭環境は、およそ家族とは呼べない関係。
お互いの趣向を否定しあい
いがみ合うだけの毎日。
誰も誰かを理解しようとはしない。
上っ面だけの関係。
俺も家族を理解しようとは思わない。
そんなの今更気持ち悪い。
罵られて 暴言を吐かれて
それを笑ってやり過ごす
それがルール。
幸せなんてきっとどこにもない。
生きていたいと思うことなんて生涯ない。
でも死にたいと思うのは
もしかしたらもう現世は充分楽しんだからじゃないのか?
始まりが幸せでなければ
きっと幸せを求めることなんて意識しないのだろうから。
きっと俺の幸せは
俺が俺である前に終わってしまったんだ。
初めから望まれた子供ではなかった。
たとえそれが真実だとしても。
ゴミ箱
捨てられるのが怖いから
僕は初めからゴミ箱の中に居ることにした。
捨てられる準備。
心の整理。
燃やされても
きっと御伽噺の様に
心臓だけ残るなんてこともないだろう。
灰になって風に乗っていけたら
多分僕は報われる。
貴方の一番でありたい。
貴方の唯一でありたい。
それが叶わないなら
捨てられてしまって構わない。
いつでも僕は燃やされる準備。
一番にも唯一にも成れなかった
その他大勢でいることに耐えられなかった自分の所為。
ゴミ箱の中から貴方を見る。
貴方の一番は
貴方の唯一は
どんな人なんだろう。
僕に似ていないといいな。
誰からも必要とされないから
今日も僕はゴミ箱の中。
燃やされて灰になるまでは
僕の唯一は貴方だから。