子どもの熱性けいれん(ひきつけ)ほど、ご両親を驚かせる症状はないでしょう。
突然の発熱とともに、何の前触れもなく、突然意識を失い、白目をむいて、全身をガクガク震わせながら、身体を硬くします。呼吸が止まってけいれんするので、顔色も悪くなります。けいれんはあまり目立たないで、全身脱力して、意識がなくなることもあります。
発熱以上にご両親を驚かせ、怖がらせる症状ですね。ご両親がパニックになることもあります。このまま頭がおかしくなったらどうしよう!などとも考えるでしょう。確かに、髄膜炎によるけいれんだったら、後遺症が出ることも稀ではありませんからね。
熱を出している子どもにけいれんが起こったら、大切なことはパニックにならないことです。
救急車を呼べるところでは、すぐに呼んでいただくのが良いと思います。それでも救急車が到着するまでは、7~10分くらいはかかるでしょう。
待っている間、何をしていたら良いでしょうか?
まずやることは、どこかにぶつかって怪我をしないようにすることです。足をツッパたりしても、体が移動しないような安全な場所に横向きに寝かせましょう。横向きに寝かせるのは、嘔吐した場合に吐物が気道に入らないようにするためです。着衣は緩めましょう。呼吸を楽にするためです。
昔は、迷信で「舌を噛まないように何かを口にくわえさせる」ことが勧められていましたが、やってはいけません!舌を噛むことはありませんし、かえって呼吸が悪くなることが多いからです。また、嘔吐した場合にも誤嚥しやすくなります。
「○○ちゃん、大丈夫?大丈夫!?」などと言って体を揺するのもやめた方が良いですね。余計な刺激になって、けいれんが強くなることもありえます。
体を横向きにして、ともかくも呼吸をしていたら、まず安心です。
次にやることは、覚えておいた方が良いことを、意識して覚えておくことです。
けいれんは何時何分頃に始まったのか?(けいれんが何分くらい続いたかは大事な情報です)全身の痙攣だったか?半身だけだったか?白目を向いた時、目はどちらを向いていたか?などを覚えておいていただくと、救急で拝見した小児科医にとっては、とても大事な情報になります。
熱性けいれんは普通5~10 分くらいで収まるので、救急車が来たとき、あるいは、救急室についたときには、けいれんは止まっていることが多いと思います。その時は、救急の小児科医が診察して入院が必要であるかどうかを診断してくれることになります。
多くの場合、けいれんが止まった子供は、一度目を開けた後は、そのまま眠ってしまいます。救急の医師のいちばん多い助言は「このまま帰宅しましょう。明日、念のためにかかりつけの小児科医のところを受診してください」というものです。家でもう一度けいれんすることを予防するために、けいれん予防の座薬を挿入してから、帰宅することも多いでしょうね。
では、救急室の小児科医はどのような基準で「帰宅できるかどうか」を判断しているのでしょうか?
次回に、書いてみましょう。
キッズクリニック 院長 柳川 幸重