【一口知識】風邪症状の終わり頃に、子どもの両頬が「りんごのほっぺ」のように赤くなるので、「りんご病」と呼ばれているウイルス感染症です。子どもでは重症化することはあまりありませんが、成人では重症化することがあります。妊娠した女性がかかると胎児が貧血になり流産・死産になることがあるので注意が必要です。
【はじめに/原因】
ヒトパルボウイルスB19 (Human parvovirus B19) というウイルスが病原体で、正式な病名は「伝染性紅斑」です。英語で”slapped cheek disease” (引っ叩かれた頬の病気)と言われるのも、やはりほっぺたが赤いことからですね。”Fifth Disease” と言われることもありますが、皮膚に発疹のできる子供の感染症で五番目に数えられるからだそうです。
【症状】
子どもと成人の症状、特に重症度はかなり異なります。
感染後(ウイルスが体に入った後)の潜伏期間は5~6日(最大2週間)で、風邪症状(発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛など)が見られますが、子どもではこの風邪症状がまったくないこともあります。この潜伏期間にウイルスは血液中で増えて、気道分泌物にもウイルスが出てきます。その後数日は無症状ですが、両側の頬に紅斑が出て来るようになります。すぐに体幹・四肢にも薄い赤色のレース様(大理石紋様とも言われます)の発疹(紅斑)が出てきますが、薄くてわからないこともあります。(入浴後によく見える様になって気がつかれることもある様です)かゆみはほとんどありません。この紅斑は1~2週間ぐらいで自然に消えていくので心配は入りません。
子どもでは風邪症状などは全く気づかれずに、頬と身体の紅斑で気づかれることも多いようです。
成人では子供よりはるかに全身症状が重いことが多く、発熱、頭痛、掻痒感、関節痛、筋肉痛が見られます。合併症として、心筋炎、急性脳症、脳炎もまれにみられ、特に先天性溶血性疾患を持つ人では無形成発作(重症貧血と血小板、白血球の減少)が起こることが知られています。
とくに覚えておかなければいけないことは、妊婦さんが感染すると(とくに妊娠前半期)、ウイルスが胎児に感染して、10%が流産・死産となり、20%が重症の貧血となり胎児浮腫になることです。この場合は慎重に観察することが大切であり、人工妊娠中絶の適応ではない、とされています。
【治療】
ウイルスに対する治療はなく、またワクチンもありません。
【予防】
潜伏期に感染する疾患です。頬や身体に紅斑が出た時はもう人には感染させないので、ほっぺたが赤くなった時には隔離は不要です。
感冒と同じように感染するので、咳エチケットや手洗いをこまめにすることなどで予防するしかありません。
保育所などでりんご病が発生した場合には、保護者に知らせて子供の送迎時の感染を避けるように努力すること、妊娠している職員は休ませるなどの配慮が望まれます。
りんご病は一度感染したら生涯免疫を持つと言われていますから、子どもがかかったらそれを記録(記憶)しておくことも大切ですね。
【登園登校の時期】
りんご病と診断された時には、もうウイルス排泄は無くなっていますから、診断しても登園を控えることはありません。
本人の全身状態が良ければ登園可能です。しかし、保護者・職員にリンゴ病の発生を伝えることは大切です。
日本学校保険会の「学校感染症と出席停止の基準」には、『伝染性紅斑;発疹のみで全身状態が良ければ登校可能』となっています。
【注】学校感染症と出席停止の基準
キッズクリニック・グループ
名誉院長 柳川 幸重
