52(5)「ここに、このままずっといたい」 | 海峡kid.の函館ちゃんちゃんこ物語

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函館ちゃんちゃんこ物語52(5)

 

 

「このまま、ずっとここにいたい」

 

 

函館の歓楽街、大門にあるBarリヨン。
 

夏目雅子似の超美人ママの隣に座っている。大学生の分際で、こんな天国のような幸せな状況はあり得ない。道場海峡男は、超美人ママの美しさと優しさに魅了され、次第に超美人ママさんの奴隷と化した。

 

「このまま、ずっとここにいたい・・・・」

 

しかし、海峡男は決して飲みに来たのではなかった。大学教授から頼まれたアルバイトで、アンケート調査をしているのだ。

 

バーカウンター


海峡男は、アンケート用紙に記入している超美人ママさんを横目でちらちら見ながら、ウイスキーに口をつけた。
まろやかなウイスキーの味と香りが口いっぱいに広がると同時に、超美人ママさんの、体中が溶けそうなくらいの、この世のものとは思えない、微かな甘い香りが・・・。


「ああ、もっと、ママさんの顔を見たい」・・・薄暗い店内なのに、ママさんの顔は眩しすぎて見られない。
「あのっ・・・・」
海峡男は、思い切ってママさんに声をかけた。
「なあに?どうしたの?」

 


ママさんの甘ったるい可愛い声が聞こえた。体中に雷が落ちたように電流が走った。一瞬のうちに、髪の毛は逆立ち、目は真っ赤に充血し、全身に鳥肌が立った。

海峡男は、思い切ってママさんの方に顔を向けた。

「はっっっっ・・・・・・・・・!!」

目が覚めた。
「・・・・夢?」
海峡男は、放心したように、しばらく雨漏りで黒いカビの生えた天井をじっと見つめていた。

夕飯を食べ終えて、音楽を聴いているうちに眠ったらしい。こんな気持ちのいい夢は生まれて初めてだった。・・・とても、とても、とても。


海峡男は、これからアンケート調査で高級クラブやバーに行くことが、大人の世界への入り口のような気がしてきて、とても楽しみになった。もしかしたら、ママさんに会えるかも・・・。

海峡男は起き上がり、レコードプレーヤーのふたを開けて、終わっていた10ccのレコードにもう一度カートリッジの針を落とした。

 


「I`m not  in love」


・・・夢の中のような心地いい前奏が聞こえてきた。

 

「ママさん・・・」


続きます



「函館ちゃんちゃんこ物語」

毎年届く年賀状。その中には学生時代の懐かしい仲間のものもある。いつの間にかみんな年を取った。

道場海峡男(どうばうみお)は、本棚の隅から、色あせた大学の研究室の機関誌「学大地理」を取り出した。40年前の懐かしい思い出の数々が鮮明に蘇って来た。

研究室の仲間、ちゃんちゃんこ軍団の同志、4年間の輝く函館の歴史がここにある。

 


※おことわり
この物語は、実際にあったかどうか疑わしいことを、作者の老化してぼんやりした記憶をもとに書かれていますので、事実とは全く異なります。登場する人物、団体、名称等は、実在のものとは一切関係はありません。
また、物語の中の写真はすべてイメージです。