涼風ペナン島で 94
マレーシア・ペナン島に、
2009年に海外赴任してきた道場海峡男家族や
道場の同期の仲間たちも、
ペナンでの生活や仕事にも慣れ、
それぞれが自分のペースをつかんできた。
それと同時に、
赴任2年目、3年目との飲み会も盛んになった。
最初は、3年目の選ぶ安いホーカーに行っていたが、
1年目が選ぶのは高級ホーカー。
少しずつ「ズレ」が・・・。
いつまで続く、この平穏
「食の楽園ペナン」
日本では食べられない、美味しいローカルフードがたくさん、それもとても安い。和食にも苦労しないし、あの豊富な種類の果物類。
ペナンの食生活はとても充実していた。
リタイヤした人たちがたくさん移住してくるのも、よく分かる。
ただ、道場海峡男はあくまでも海外勤務。
仕事がある。
楽園ペナンと言えども、仕事が絡んでくると、「楽園」なんて飛んでしまう。大手ではない貧乏会社の特性か、道場の海外支店の仕事は、量的にきつい。日本の支店と比べ、支店の人数が2割ほど少なく、現地採用の社員もいる。また、現地の会社や人間が相手なので、日本の考え方が通用しないことも多い。
そして、意外と面倒なのは、職場の日本人の人間関係だ。
海外を希望して来るメンバーはやはり、個性的な人間が多く、それぞれの故郷の文化や気質も違うため、けっこうメンバー同士で意見が合わず、衝突することもある。もちろん、人間としての「質」にも問題がある場合もあるが・・・。
ペナン支店の赴任3年目の連中も、それぞれ能力があり、個性的なメンバーぞろい。5人のうち、関西が3人、九州と東京がひとりずつという構成で、
今は結束力がありチームワークが取れている年次ではあるが、他を排斥する雰囲気が時折見られる。
赴任3年目は、賢い大坂やお世話係で気の利く児島のいる連中である。
話を聞くと、この年次は赴任1年目に激しい内部抗争があったらしく、とっくみあいのけんかもしたという話だ。本質的には、野蛮な連中なのである。
その内部抗争で他を制圧して覇権を握ったのが、班長の大坂であった。体もでかいし、学生時代は格闘技をやっていたという、見るからに強者である。
「そんな権力なんて、たかがしれている」と思っている道場ではあるが、気が弱く、上品な道場は、とてもけんかでは勝てそうもないので、大坂の敵にはならないように、余計なことで彼と衝突することは避けようと思っていた。
しかし、支店のナンバー2で、管理職という地位の道場としては、いずれは彼等と仕事で戦うときがくるとは思っていた。
幸い、班長の大坂は能力が高いため、普段の仕事は彼に任せておけるし、みんなのまとめ役としても、とても良い働きをしていて、道場はとても助かっていた。
今のところは平穏な職場である。
ただいくら平穏な職場でも、道場が本当にほっと力が抜けるのは、やはり自分の家である。
12階から見える絶景は、いつも心を穏やかにしてくれる。
「さて明日の職場は、どんなことがあるかな?」
海を眺めながら、道場は漠然と仕事のことを考えていた。
(続きます)
※おことわり
この物語に登場する人物、団体、名称等は、実在のものとは一切関係はありません。
また、物語の中の写真はすべてイメージで、新旧が入り交じっています。
「涼風ペナン島で」
定年までの残り10年を、充実したものにしたいと考えた道場海峡男(どうば うみお)の念願の「海外勤務」の赴任先は、マレーシアのペナン島だった。
ペナンがマラッカとともに、世界遺産に登録された次の年、まだペナンの昔が残っていた2009年のことだった。



