52(4)「今日、ママさんの奴隷になりました」 | 海峡kid.の函館ちゃんちゃんこ物語

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函館ちゃんちゃんこ物語52(4)

 

バー、スナック、キャバレーのアンケート調査のためとはいえ、

函館の歓楽街大門を学生一人で歩く心細さは、

けっこう厳しいものがある。
道場海峡男は緊張しながら、

最初に目に入ってきたお洒落な感じのBar「リヨン」の戸を開けた。
中にいたのは、

夏目雅子さん似の清楚で気品のある超美人のママさん。

海峡男は、硬直してその場を動けなくなった。
 

barりよん

 

「ママさんの奴隷になった日」

 

海峡男は、ロボットのような不思議な動きをしながら、カウンター越しに少しママさんに近づいて、
「あの・・・・こ、このこのアンケートのお願いで・・・」
と言って、アンケート用紙を渡した。

超美人ママさんが顔を近づけてきて、アンケート用紙をのぞき込んだ。ほんのりと気絶しそうなくらい甘い、いいいい・・・香りがした。

「あ、あの、か、か、書けるところだけでけっこうですので・・・」

「・・・ら、ら、来週取りに来ます」
と、海峡男はドキドキしながら言った。

すると超美人ママさんは、
「あら、そう?・・・今書いてもいいわよ。待っててくれる?」
と、にっこり微笑んだ。海峡男はママさんの笑顔を見て、一瞬のうちに虜になった。

 

超美人ママさんは、
「これでも飲んで・・・」
と言って、グラスに大きな氷を入れ、海峡男が見たことがない、たぶん舶来のウイスキーを注いだ。そして椅子に腰掛けるように促し、カウンターから出てきて、海峡男の隣に座った。



 

また、体中が溶けてしまいそうないい香りが、海峡男を支配した。心臓の鼓動は、もう天井を突き抜けていた。脳みそは完全に沸騰し、液体になって今にも耳から流れ出しそうだった。

「あっ、、、、ありがとう、ご、ご、ござまい・・す」
海峡男の発した言葉は、決してお礼にはなってはいなかった。

超美人ママは、
「ふふふ」
と、優しく笑いながら用紙に目を落として、
「・・・えっ?これはどう書けばいいのかなあ」
と、アンケート用紙をずらして、海峡男に体を寄せた。ママの手が海峡男の腕に触れた。きれいに整ったママの顔が、海峡男のすぐそばにあった。

 

 

海峡男は吸い込まれそうになったが、やっとのことで思いとどまり、アンケート用紙をのぞき込んだ。しかし、よく分からなかった。

 

「えーと・・・・」

と言うと、ママは、

「あっ!分かったわ。そうか、簡単だ。ありがとう」

と、ひとりで解決してくれた。頭もいい人だ!・・・おまけに海峡男にお礼まで言った。

 

海峡男は、もうママさんの奴隷となった。

 

 

続きます


※おことわり
この物語は、実際にあったかどうか疑わしいことを、作者の老化してぼんやりした記憶をもとに書かれていますので、事実とは全く異なります。登場する人物、団体、名称等は、実在のものとは一切関係はありません。
また、物語の中の写真はすべてイメージです。

 

「函館ちゃんちゃんこ物語」

毎年届く年賀状。その中には学生時代の懐かしい仲間のものもある。いつの間にかみんな年を取った。

道場海峡男(どうばうみお)は、本棚の隅から、色あせた大学の研究室の機関誌「学大地理」を取り出した。40年前の懐かしい思い出の数々が鮮明に蘇って来た。

研究室の仲間、ちゃんちゃんこ軍団の同志、4年間の輝く函館の歴史がここにある。