函館ちゃんちゃんこ物語52(3)
ひげの奥教授が
道場海峡男、中田文司、伊藤正盛の3人を教官室に呼びつけた。
どうして呼ばれたのか訳が分からず、
不安な気持ちで奥教授の教官室に行った3人であったが、
意外や意外、奥教授の話とは、
なんと!・・・
Bar「リヨン」、扉を開くとそこは・・・」
地理研究室のひげの奥教授からのバイトとの話は、函館のローカル雑誌のための調査で、夜の飲み屋街、函館大門にあるバーやキャバレーやスナックの実態調査であった。学生にとって縁のない高級な店の調査ということで、ちょっと悩んだ3人であったが、奥教授が発した
「バイト代は1万円!」
その金額を聞いて、声をそろえて引き受けた。
店が始まる時間は当然であるが19時以降、大人の時間である。いつもは通らない、夜の大門の飲み屋街を一人で歩く心細さは、けっこう厳しいものがある。
道場海峡男は、「客が入る前の『準備中』の時間がちょうどいい感じ」と勝手に思い、緊張しながら最初に目に入ってきた、お洒落な感じのBar「リヨン」の扉を開けた。
カラン、カラン・・・。お洒落な扉についていた高級そうなカウベルの音が軽やかに響いた。緊張の瞬間であった。でも、道場海峡男は、
「ごめんください」
「情報誌『函館経済』のアンケート調査のお願いに参りました」
と、いつになく元気よく爽やかな声を出した。
Barの中はシーンとしていて、空気が止まっているようだった。
すると奥の方から、ママさんみたいな女の人の声がした。
「あら、お店はまだですよ」
勇気を振り絞って、海峡男はもう一度、
「アンケート調査のお願いです」
と、元気よく声を出した。自分でも惚れ惚れするくらいのいい声が静かなBarの店内に響いた。
店内は薄暗かったが、カウンターにいたママさんらしい女の人の顔はちゃんと見えた。海峡男はびっくりした。海峡男たちと同世代の超売れっ子、超美少女の夏目雅子さんをちょっとお姉さんにした、清楚で気品のある超・超美人のママさんであった。
「まあ、お若いお兄さんね!どうしたの?」
夏目雅子さん似の超・超美人ママさんは、甘ったるい可愛い声で海峡男に近づいてきた。ママさんの美しさに圧倒され、硬直した海峡男は、その場を動けなくなった。
続きます
※おことわり
この物語は、実際にあったかどうか疑わしいことを、作者の老化してぼんやりした記憶をもとに書かれていますので、事実とは全く異なります。登場する人物、団体、名称等は、実在のものとは一切関係はありません。
また、物語の中の写真はすべてイメージです。
「函館ちゃんちゃんこ物語」
毎年届く年賀状。その中には学生時代の懐かしい仲間のものもある。いつの間にかみんな年を取った。道場海峡男(どうばうみお)は、本棚の隅から、色あせた大学の研究室の機関誌「学大地理」を取り出した。40年前の懐かしい思い出の数々が鮮明に蘇って来た。
研究室の仲間、ちゃんちゃんこ軍団の同志、4年間の輝く函館の歴史がここにある。