かものはしvs社長 | かものはしの口遊〜くちずさみ〜

かものはしの口遊〜くちずさみ〜

島根から札幌に来て18年目。相方、娘に猫(雌)も加わり、居場所が徐々に奪われていく様子を口遊みます

来週の水曜日に、飲み会に出てくれ…と上司に言われたのが一週間前。 上司の頼みである。 断れようはずもなく止む無く受諾したのが運の尽き。

「社長と同席なんだけど」

「その前に会議があるんだけど」

「社長の面前での会議なんだけど」

何故か情報を小出しにしてくるうちの上司。 間違いなく、最初からそんな話を聞いておったら有無を言わさず断っておったがのぉ。 そこらを見越して小出しにしてくる辺り、悪徳商法と大差は無いのぉ。

何やら訳が分からないまま一週間を過ごし、そしてやってきた当日。 そして今日も、この期に及んで情報を小出しにしてくる我らが上司。 どうやらうちの課では上司とわし、二人しか参加せんらしい。 明らかな人選ミスである。 課で一番年下の部類に入るわしに何を期待しとるんじゃ。 もっとわしより給料貰ってる人が幾らでもおるだろう。 後輩を育てようという大義名分の下、言葉巧みに楽をする先輩が多すぎる。 リストラの蔓延るこのご時世、わが社も即刻、仕事をしないお偉いさんから人員整理をして欲しいものよのぉ。 すると、うちの課のボスからおらんくなるのぉ。 ぜひこの話は進めねばならん。

そして連れて行かれたのは、社長室の隣の会議室。 赤いカーペットの廊下を歩いて、こんなところに部屋があったのかと思う所へ入ると、わしと同じ運命をたどった各課の代表が悲愴な表情を浮かべて座っておりました。 そしてわしらが車座で座っておる後ろに、ぐるりと取り囲むように座る管理職。 この配置は、取り調べと言っても過言ではありません。 基本的人権を無視した見事な配置である

そして年末年始の意見を遠慮なく言ってくれ…と言われたが、こんな四囲を上司に囲まれて何を語れというのだろう。 ここで迂闊な事を喋ろうものなら、明日にも島根直行の航空券を渡されかねんからのぉ。 しかし、ここは社長の前での生討論である。 ここでアピールせねばならんということで、ボスには一切目をくれず、思いの丈を言ってきました。 わしが島根に帰るのが先か、ボスが転勤になるのが先か、その結果は今年度末の楽しみになりそうじゃのぉ

その後、お楽しみの飲み会は、まさかの会社内。 更に移動する間に数名の人間が巧みに逃げおおせてるではないか。 なるほど、このタイミングでトンズラこく手があったのか。

そして社長との飲み会。 わしら下っ端としては、社長にビールを注ぐタイミングを見てるのと、話に相槌を打つのが仕事と言わんばかりに、ろくに食べ物に手も付けられません。 何しろ、正面に座られてしもうたからのぉ。 仕方なく話を聞いておったんだが、どういう訳か、途中からわしと社長の一人暮らしの料理話という悲しい話になってきた。 社長は魚を三枚に下ろしたり、自慢の料理テクニックを誇らしげに語っておったが、まだわしの域には達しておらん。 しかし、わしも大人である。 ここでわしの料理武勇伝を語って社長の顔に泥を塗るようなマネはせんかった。 社長ももっと料理の腕を上げて、わしの料理に匹敵する殺傷度を誇る料理作りに磨きをかけて欲しいものである。