連休明けとあって、多忙を極めたかものはし。 仕事場に着いてまず目にしたのは、片山右京でも諦めるであろう標高を誇る仕事の山。 これは果たして、今日中に生きて仕事を終えられるのだろうか… そんな事を考えながら、仕事の準備をしておったのだが、一向に準備すら終わりません。 準備が終わらねば外にも出られんではないか。 いつもなら10時ごろには外に出られるのに、11時を過ぎても出られません。 今日はヤバい。本気でヤバい。 焦りを抑えつつも必死で仕事をしておると、まるで狙ったようなタイミングでやってきたのは我らがボス。
「今日は大変なのか」
おお?現状を全く把握しとらんぞ、この管理職。 部下の仕事も見ておらんで、一番日当たりのいい席でのほほんと今日の夕飯の事でも考えておったのでしょう。 そんな日当たりのいい所に座りたいなら、縁側で茶でも飲みながらのんびり老後を送って欲しいものである。
そんな折に突然、けたたましく火災警報機が鳴りだしたではないか。 おおっ、火事か! 避難か?今すぐ仕事を放って避難した方がいいのか? 何しろ人命は地球より重いからのぉ。 わしらの命の為に仕事を放って家に帰ってもいいですか? 誤報?いや、そんな事があろうはずがない。 今頃、どっかがメラメラと燃えておるに違いない。 さぁ、わしはどこから逃げればいいのか、導きたまえ。
しかし、警報機がこれだけ音を立てて鳴っておるのに、全く逃げ出そうという気配が見えないうちの職場。 皆、落ち着いて仕事をしております。 慌てず騒がず、仕事の基本じゃのぉ。 鳴り響く警報機を、さもBGMとでも言わんばかりに淡々と仕事をこなす職場の人たち。
そんな中、勇敢にも火災警報機の原因を探るべくどこかで向かった我らがボス。 さすがはボスよのぉ。 良いヒマつぶしを見つけたと言わんばかりの好奇心。 これで実際火事だったら、わしらを置いてそのまままっすぐ出口の方に向かうに違いない。 わしらのように、職場を枕に討死するくらいの気概を見せて欲しいものよのぉ。 というか、ボスこそ、職場と運命を共にするべきではなかろうか。 実際に火事ならば、わしらは涙を拭いながら、職場と運命を共にするというボスを柱に括りつけてやるんだがのぉ。
それからしばらくして、警報機が鳴り止むと同時に社内放送。
「ただいまの警報は、車の排気ガスを感知して鳴った模様」
車の排気ガスで鳴るんじゃのぉ、火災警報機って。 何て高性能・低信頼な火災警報機なんでしょう。 実際に火事になったらたぶんわしらは全滅じゃのぉ。 たぶん、ボスだけが生き残る事になるでしょう。 その時には、部下を救いに行かせるという大義名分の下、業火の中へ放り込んで欲しいものである。