営業感覚 | 団塊世代の"愚考にため息"

団塊世代の"愚考にため息"

ふと思い出す過去の出来事と後悔。次々と、浮かんでは消えていく愚考を書きとめていけば、いつかはネタ切れになるはず。きっとその後は、良き日々の思い出だけが浮かんでくるにちがいない。

都市ホテルには、宿泊・宴会・レストランの3つの主要な営業部門があります。
通常はそれぞれの部門の販売に特化したセールスフォースが存在します。宿泊部門の営業マンと宴会部門の営業マンは、先の対米国戦に負ける前の大日本帝国陸軍と海軍のような気質の違いがあります。

宴会セールスは、代替が難しい個別宴会場を販売していますので、宴会当日まで細かいスケジュールを設定して案件をクローズしていきます。代替が難しい理由は、宴会場にはそれぞれ名前がついており、宴会場を特定して主催者が婚礼なり式典なり展示会なりを計画し、参加者に告知します。告知した後は、日時会場の変更はご法度です。したがって、ダブルブッキングは許されません。

一方、1000室2000室という大型ホテルの宿泊セールスは、団体客がチェックインするまで売上は不透明です。海外からの団体客(いわゆるインバウンドグループ客)は、一層不透明です。排他的経済水域でトラブルがあったり抗日デモが拡大したりすると団体は目的地を変更します。また、チャーター便が飛ばないという理由で前日キャンセルも日常茶飯事です。

したがって、宿泊セールスは、1個の案件を粘り強く慎重にクローズするという営業はしません。たとえば、1000室のキャパシティに歩留りの悪い2000室の予約を入れて、稼働率アップを狙います。

宴会セールスのボスは、お得意さま企業の担当責任者と運命共同体のような関係を育むことで売上を確保します。宿泊セールスのボスは、海外出張や地方出張を繰り返し、金の匂いのするところには、躊躇せずに踏み込んでいきます。

宿泊・宴会・レストランを5年ずつ経験し、自分なりに確信していることは、「餅は餅屋に」ということです。宴会のボスが、宿泊のリーダーシップをとることは困難です。経営者は結果で評価すればいいので、いい加減に見える宿泊セールスフォースの手綱を緩めておきます。