ワイルド×咆哮は体感熱量50℃超え――征矢学&タナカ岩石 | KEN筆.txt

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鈴木健.txtブログ――プロレス、音楽、演劇、映画等の表現ジャンルについて伝えたいこと

WRESTLE-1 GPトーナメント開催を前に、当初は昨年の優勝者である征矢学に話を訊く予定だったが、ワイルド十三段は取材の場にタナカ岩石を帯同。6・6後楽園ホールでWRESTLE-1タッグ王座に挑戦し、ベルト奪取はならなかったものの6・18清水マリンビルではNOSAWA論外を含めた反体制トリオでUWA世界6人タッグ王座を奪取し、にわかに注目が高まってきている。伊藤貴則と並びプロレス総合学院2期生としてACEを盛り上げる岩石に対し、征矢は谷底へ落とし這い上がってくるようにして育てると宣言。そんな2人のやりとりをお届する。

 


征矢のGP2連覇に岩石が太鼓判
信用度は6:4のまま変わらず


征矢 まずはじめに。私とタナカ岩石は先日の後楽園でタッグのベルトに挑戦したのですが、その時に初めて組んだんです。まだお互い何もわからないから岩石が6割、私は4割しか相手のことを信用しておりませんでした。でも、それを経たことで今日のインタビューに関しては岩石が8割しゃべり、私は2割ということで、ここですべて話しました。あとは岩石が語ってくれるでしょう。さ、しゃべりなさい。
岩石 ……(何を話したらいいかわからずかたまる)。
――征矢さんはWRESTLE-1 GP2年連続優勝を目指す立場にあるのですが、岩石選手から見てその可能性はいかがでしょうか。
岩石 征矢さんの勢いは感じ取っているんで…。
――今の征矢さんには勢いがあると。
岩石 いや、去年優勝したという意味での勢いで。そのあと、ケガされて横浜文体を…。
征矢 やめろ、その話は!
岩石 (やめずに)欠場された悔しさは表に出していなくても心の中に絶対あると思うんですよ。
征矢 何を知っているというんだ、キミは。
――征矢さんの心の中まで見えていると!
岩石 征矢さんは熱い方なんで、絶対持っているはずです。
――“絶対”という言い切りと“はず”という推測を一緒に使う日本語はおかしいです。
岩石 なので、今回のGPに懸ける気持ちは本当に強いんじゃないかなと思います。
――岩石選手から太鼓判を押されましたよ。
征矢 ありがとうございます。
――普通のリアクションですね。
征矢 2割以上はしゃべらないんで。でも、よけいなことを岩石が言うから思い出しちゃいました。去年のGPで優勝したところまで言えばいいのに、なんでその先のことを言うんだよ。
――優勝経験者という意味では経験値は他の参加選手よりも高いですが、今回はワンデートーナメントですので、優勝するには一日3試合やって勝たなければいけません。
征矢 シングルの3試合は今までないですね。でも、配分を考えてやったら足元をすくわれますから、全部気を抜かずにやります。
――岩石選手は残念ながらACE代表戦で敗れてトーナメントに出場できなかったのですが、もちろん征矢さんのセコンドにはつきますよね。
岩石 はい。セコンドで見ていると征矢さんは人を惹きつけるものがあると思います。
征矢 誰を惹きつけているんだ? 具体的に言ってみろ。
岩石 征矢さんのファンはいっぱいいますよ。
征矢 俺はおまえの試合中の顔に惹きつけられるよ。セコンドでいるのに、顔の遠近でリングの中へいるように見えるだろ。どういうことだ?
岩石 ……(下をうつむくのみ)。
征矢 セコンドなのにリングの中へ入ってきたら反則負けになっちまうじゃないかって一瞬、思いますから。それほど顔にインパクトがあるというか、大きいというか。
岩石 セコンドで見ているうちに自分も熱くなってきてしまうんです。
――そもそもなぜ征矢さんと組みたいと思ったんですか。
岩石 もともとはNOSAWAさんに何がなんだかわらないまま「こっちに来いよ」と言われて、言われるがままセコンドにもつくようになったんですけど、そこで征矢さんの試合を見て感情移入したというか。だからタッグに挑戦すると言った時に征矢さんと組んでやりたいと思いました。
――多くの先輩たちがいる中で征矢さんと組みたいと思ったのは…たとえばご飯をご馳走になったことがあるとか。
岩石 いえ、ないです。
征矢 自分の食い扶持は自分で見つけろということですよ。山の中だってそうじゃないですか。私は本人のためにも絶対におごらないようにしています。
岩石 こういう熱い方なんで…。
征矢 その熱いというのは具体的に何度ぐらいなんだ?
岩石 ……50℃以上あるんじゃないですか。僕自身は熱さというのを意識しているんじゃなく素で出てしまっているんですけど、たぶん同じものに惹きつけられたんだと思います。
征矢 同じって…俺はそんなに顔大きくないんだがな。だからこそ、私も頑張って岩石さんに大きさで追いつかなきゃいけないっていう気持ちにはなりますよね。
――先輩の方が合わせてくれるというのは、特例ですよ。
岩石 人体的に無理がありますよ。
征矢 わからないじゃないか! アゴをメッチャ鍛えて発達すれば四角いベースみたいになれるかもしれないだろ。でも、この前のタイトルマッチは昔の自分を思い出させてもらえましたよ。伊藤に向かっていく岩石を見て、真田聖也(現・SANADA)やKAI、大和ヒロシとやっていた若い頃の自分を見ているかのようだった。俺からいけ!というんじゃなく、自分でいってくれた方がこっちもやりやすいし。それによって6:4になれる。何事も6:4がベストですから。
岩石 タイトル挑戦でしたけど、僕の中ではベルトを獲るよりもあいつ(伊藤)を倒したいという気持ちの方が上だったんで。
征矢 じゃあ、仮にあの試合、俺が勝ってベルトを獲ったら納得できずに返上していたのか?
岩石 返上はしないで、逆指名をしてもう一回やりました。
征矢 そこで伊藤が「いや、別にやらなくてもいいです」って言ったらどうすんだ? 返上するのか。
岩石 返上はしないです。
――そんなに返上させたいんですか。
征矢 そこだけはハッキリさせないと。
――デビュー8ヵ月で、先輩の河野選手をそっちのけにして伊藤選手に向かっていったんですからね。
征矢 生意気だな。
――征矢さん、デビュー8ヵ月の頃ってどうしていましたか。
征矢 私は猫とネズミと(無我ワールドの)道場で会話していました。
岩石 そこは同期であって、同い年なんで倒さないと気が済みません。
――WRESTLE-1タッグ王座奪取はなりませんでしたが、一緒に闘うことで信用度は増したんですよね。
征矢 いや、そこは変わらないです。もちろんあれほどのやる気を見せて向かっていったわけですから、これからも組んでやっていきたいとは思いましたけど、一回組んだぐらいで100%信用できるまでになったとはならないものですよ。
――どのあたりが足りないんでしょう。
征矢 そこはやっぱり僕の顔の大きさじゃないでしょうか。
――征矢さんの方に問題があると。
征矢 そうなりますね…僕が頑張らないといけないということじゃないですか。じゃあ、そこは頑張るんで岩石もこれからどんどん自分を成長させていってほしい。


 

ワイルドを途中でやめた熊ゴローは
すでに死んでいると征矢が断言


――岩石選手は征矢さんから何を学びたいですか。
岩石 ……(熟考して)顔の小ささ、ですか。
征矢 人の顔を見て言うんじゃないって。俺の顔を見ても答えは出てこないぞ。
岩石 征矢さんにお聞きしたいんですけど、具体的にワイルドってどういうものなんですか。
征矢 そもそもワイルドっていうのはだな…(以下、長時間アレな説明が続いたので略)オーライ?
岩石 ちょっとはわかりました。
征矢 岩石は顔がワイルドだからな。でも強制はしない。自分自身でワイルドを追求したいという気持ちがあるなら、おまえなりのワイルドを探せばいい。途中でワイルドをやめたやつはみんな死んでいるから、人に言われてやると後悔するぞ。熊ゴローも死んだだろ。
岩石 えっ…生きてます。
征矢 肉体は生きていても、心がもう死んでいるんだよ。だからリングの板が割れるだろ(最近、熊ゴローがセントーンを出すたびに割れることが続発している)。
――熊ゴロー選手はトーナメント1回戦で当たります。
征矢 だいたい「1+1が5+5になる」とか言っているのは、数学はおろか算数をやっていなかった証拠じゃないですか。ああいう大人にはなるなよ。10+10はなんだ?
岩石 20です。
征矢 正解だ! それでいいんだ。
――ワイルドに関しては強制しないとのことですが。
岩石 今はワイルドを追求したいという気持ちはないですけど、征矢さんとやっていくことで自分の知らない間に増していくかもしれません。
――この前もワイルドポーズを不意に振られて合わせられなかったですが。征矢さんから見て現在の岩石選手のワイルド度数はどれぐらいでしょうか。
征矢 いやいや、-48ぐらいですよ。
岩石 あと48頑張ってようやくゼロなんですか?
征矢 まだ自分の中のワイルドに気づいていないから、理解さえしていない。まずは理解してスタートラインに立つことです。それも私が引っ張りあげても意味がない。ライオンでもよく見られるじゃないですか。自分の子を谷底へ突き落とすという。
――あれ、よくたとえに出されますけど『アニマルプラネット』とかを見てもそういうシーンが出てきた試しがないんですよね。
征矢 確かに、意外と親のライオンは子どもを守ってますよね。でも『北斗の拳』にはありましたよ…あれ? これ、俺が8:2でしゃべっているじゃないですか。インタビュー、録り直してください。
――そういうわけにはいきません。岩石選手は、ACEの所属選手として団体をどうしていきたいというのはありますか。
岩石 何よりも知ってもらうことですよね。まだまだACEを知らないプロレスファンが多いと思うんで。そのためにも試合数を増やしていけたらと思います。
征矢 試合数を増やす方法を教えてやる。キミがACEの社長になればいいんだ。自分で試合数も増やせるし、私もセコンドについて「社長!」って言える。
岩石 いや、自分は一選手なんで…。
征矢 責任を負うというのはいいことだと思うんだよ。
岩石 それなら征矢さん、反体制なんですからハヤシ社長に席を譲っていただいて…。
征矢 WRESTLE-1のことはいいんだよ! 今はACEの話をしているんだ。ACEの社長はいないだろ? 自分が社長をやることでプレッシャーを与えるんだよ。ちゃんと俺も応援するから。
岩石 どう応援してくださるんですか。
征矢 「ガンバレ!」って。
岩石 この前、UWA世界6人タッグのベルトを征矢さん、NOSAWAさんと獲ることができたのもACEを知ってほしい、そのためにタイトルがほしかったというのもありました。
――デビュー9ヵ月での初戴冠でした。
岩石 Tシャツも常にACEのロゴが入っているものを着るようにしていますし、とにかく今はACEの名を広めたい。
征矢 それならここ(おでこ)にACEとタトゥーを入れたらどうだ? Tシャツ、毎日着るほど枚数ないだろ?
岩石 1枚です。
征矢 それじゃ毎日着るのは無理なんだから。額にACEと入れたら街の中で見たら目立つぞ。絶対いいと思うんだけどなあ。
――額でなくとも“咆哮”と入れたタイツの空いているところでいいんじゃないでしょうか。あれはなぜ咆哮と入れているんですか。
征矢 三国志だよな(ドヤ顔)。
岩石 違います。漢字を入れたかったんですけど、ありきたりの言葉を入れたくなかったんです。見られた時に「あれ、なんて書いてあるんだ?」と思われて意味がある言葉がほしかったんで。咆哮をあげている自分が先にあって思い浮かびました。
――頭突きを使うのはもともと自分の頭が硬いという認識があったんですか。
岩石 けっしてそういうわけではなかったんですけど、周りと違うものはないかと考えた時に腕や脚ではなく頭を使おうと。小さい頃に頭と頭がぶつかって、僕は平気だったんですけど向こうの子の頭が切れちゃって。
――数あるプロレスの技でバックドロップを得意技にしようと思ったのは?
岩石 僕は器用じゃないので、ひとつでいいから投げ技を身につけたいと思って使い始めました。タナカ岩石のリングネームになる前から出していたんですけど、バックドロップは「岩石落とし」とも呼ばれるんで、リングネームに合わせてそっちで呼ぼうと。これも偶然ですね。
――タナカ岩石というリングネームは誰につけられたのかわからないんですよね。
征矢 親につけてもらったんじゃないのか。
岩石 (スルーして)最初は違和感しかなかったですよね。
征矢 (小声で)岩、だけに。
――……。
岩石 ……。
――まあ、ピッタリのリングネームだと思います。
征矢 そうだよ。この風貌に産んでくれたお母さんに感謝しろ。パンフを通じて感謝の意を伝えるんだ。
岩石 ……母へ。この風貌に産んでくれてありがとうございます。この風貌に産まれて悔いはないです。