ポジティヴ思考になるよりも理屈による納得がほしい性格――吉岡世起インタビュー | KEN筆.txt

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今年の3月にクルーザーのベルトを初めて獲ることができて、あの時点では自分もそうですけど周りも「さあ、これから何を見せてくれるのか」という感じで見ていたと思います。それが初防衛戦で負けてしまって…あの時の空気は驚きを超えて「なんで!?」だったと思うんですけど僕自身が一番、何が悪いのか、足りないのかがわからず考えるようになっていきました。
 

その直後、稲葉がNEW ERAのオープニング挨拶の時に、わざわざ「吉岡さんに勝って新チャンピオンになったアンディ・ウーです」って紹介した時にカチンときて。普段から稲葉はそういうことを悪気なく言うやつなんでわかってはいるんですけど、ベルトを失って最初の大会で言われるとこっちも平常心ではいられなかった。
 

それで僕の態度が変わったら、今度は会見で稲葉が「些細なことで…」と言ったからまたそこで「おまえが言うな!」ってなって。児玉さんがタッグのベルトを失って落ち込んだのも稲葉絡みなのに、当事者でありながら言葉が軽い。それで5月の後楽園で組んだ時はギクシャクしてしまいました。
 

普段はそういう負の感情は出さないようにしているんですけど、心に余裕がなかったんでしょうね。お客さんからも「ああいう姿は見たくない」と怒られました。
 

だから4月ぐらいからはプロレスが楽しめなかったです。イチからスタイルを見直したり、自分自身は何をすべきかと考えたりとやっていく中で出た結論は、無理して変える必要はないということでした。
 

進(祐哉)さん(プロレスリングFREEDOMS)と組んだ時に「前はもっとギラギラしていて楽しそうだったじゃない」と言われたんですけど、僕はもともと脇役志向のようなものがあって、隣に人気者がいるとそれを立てようとしてしまうんです。でも、そういう役どころはもっとキャリアを積んでからやるものであって、こんなトシで落ち着いちゃうのはダメじゃないですか。
 

進さんに言われて、そこに気づいたところはありましたね。この数ヵ月がムダだったとは思わないですが周りに迷惑をかけたのは確かだし、お客さんもガッカリさせてしまったところはあったんで。いい時間ではなかったですけど、自分を見つめ直せた期間だったとは思います。
 

これまで落ち込むことはあっても表に出さなかったのが、今回は試合中の態度とかに出たから大ごとというか、周囲に影響を及ぼしてしまった。でも、レスラーは陽ばかりでないですから。僕はどちらかというと陰のレスラーなんです。ポジティヴな方向を見いだすやり方もあるでしょうけど、僕はどこがよくないのかを考えてそこを改善していく性格。
 

詰め将棋のように、理屈でここをこうしたらこうなるという納得がほしいんです。ポジティヴ思考になれば悩まずに済むんでしょうけど、なりたいとは思わないですね。
 

悩みつつ、ネガティヴであってもそれを糧にしていい方向へ持っていく方が本当の自分なので。ひとつの団体で陽の選手ばかりというのも、それはそれでどうなのかってなるし。所属選手全員がイケメンみたいなプロレスラーじゃ成り立たないですよ。
 

プロレスラーになる前から、そんな感じでしたね。慎重に考えて考えた結果、薬剤師の資格を取得したのもそうだったし。でもプロレスはリングに上がって闘うことで解消できる部分もあるじゃないですか。稲葉とのシングルマッチ(6・24横浜ラジアントホール)もそういう試合になったし、J STAGEのリングで進さんと久々に一騎打ちをやってこれもプロレスを楽しめた。
 

レッスルゲート時代は試合が月に1回しかなかったから、次にリングへ上がるのがすごく楽しみだったんです。その時の自分を思い出して、あの頃はプロレスをやれることが嬉しかったよなあって。
 

時間はちょっとかかってしまいましたけど、ベルトを落とす前の気持ちには戻れたと思います。今、クルーザーのベルトはMAZADAさんが持っていて、6月の防衛戦のあとに挑戦しようと名乗りをあげるべくリングに上がったら、却下されてしまった。僕はあの人に勝ってベルトを獲っているのに、却下される意味がわからない。
 

だけど、それだったら挑戦を受けざるを得ないところに持っていくためのモチベーションも湧くじゃないですか。MAZADAさんにかぎらず、カズさんにしても力が衰える前に勝っておきたいんですよ。アンディ・ウーに負けてベルトを失ったから、そちらの雪辱も果たさないといけないですけど、残された時間を考えたらキャリア組との闘いを急がなければいけないかもしれませんね。
 

最低限、9月2日の横浜文体はタイトル絡みの試合にこぎつけます。その前にベルトを獲ればアンディ・ウーと防衛戦をやるかもしれないし、そのチャンスがなかったら文体でMAZADAさんに挑戦するための実績作りをしていきます。
 

去年はメインでベルトを獲って泣いている稲葉を騎馬であげて、そのあと稲葉が退場口を間違えたという。勝者なのにセンターではなく横の花道から帰ろうとしたんですよ。僕はちゃんとセンターの花道から帰るようにします。