感染症として起こる病気の原因を「寒邪」として捉える六経と「熱邪」として捉える温病では治療法も異なる点が多くあります。
「寒邪」が体に侵入して起こる症状の場合、一番はじめには太陽病という捉え方をします。この場合治療としては辛温解表(しんおんげひょう」という治療を行います。これは生薬の味で辛いものをくみあわせた処方を作って「発汗」を促して、侵入しつつある邪気を汗を出すことによって体の外に追い払うという治療です。このために使う処方が麻黄湯や桂枝湯です。ここに筋肉のこわばりが強く出たりすると有名な葛根湯を使うことになります。
傷寒論という医学書の中ではこの寒邪が体表面の背中側から侵入し、次に陽明という裏という口から肛門までの消化管に入りそこで機能を失調させて便秘を起こさせ、発熱し、そこから少陽という消化管から肝臓などに入って病が重くなると考えています。
陽明に入った場合には治療法としては大黄という生薬を使って下痢を起こさせることで、裏に入った邪気を下すということをします。よく使われる処方は承気湯という薬です。
少し進んだ状態になる少陽に入った場合は和解という治療を行います。この治療は体の中の機能を支えつつ邪気を中和するようなことを行います。中和したものは腎臓から小便として排出していきます。
「熱邪」が体に侵入したときは衛分というところから侵入すると考えます。これは鼻や喉の粘膜からまず侵入してきます。そうすると体の防御機能がすぐ反応して発熱や喉や鼻の粘膜に炎症が起こります。この場合は、寒邪のときのように温めるということをしません。辛い生薬を使うと熱が強くなるので麻黄湯や桂枝湯、葛根湯などは使えません。
また熱邪が体に侵入すると体の水分が消耗するので、薬によって発汗を促すと人によっては脱水の状態が起こることがあったり、体質によっては組織の線維化が急速に広がってしまうことがあるとされています。(例、麻黄剤による瀉肺現象など)
ですからこのような場合は、発汗を促さず、熱邪を体の外に追い出す治療を行います。よく使われるのは桑の葉や薄荷、紫蘇という生薬です。処方としては桑菊飲や杏蘇飲です。少し温める生薬が配合され地ますが、初期の段階の喉の痛みや発熱には銀翹散という処方も使ったりします。
炎症がひどいときには連翹や金銀花という生薬もよく使われます。
これらの薬剤は衛分での治療を目的にしていますが、病勢が強くて体にもっと深く入り込むと気分という領域に入ってきます。