「血液サラサラ」や「瘀血(おけつ)」という言葉は、最近ではお客さんの方から言葉として出るようになりました。
西洋医学の現場でも「血液サラサラ」という言葉が使われるようになったようで、漢方を学んでいるものからは嬉しい反面、そんな言葉を西洋医学的に言って大丈夫ですか?という気もしないでもないです。
「血液サラサラ」という言葉は、今から30年ぐらい前に多摩地区の方にある中医学の普及に尽力された猪越泰也先生とイスクラ産業の当時の偉い方が「丹参」というそれまでなかった生薬を使った薬剤を販売普及するときに創った言葉とされています。
これが現在普及して言ったのですが、この言葉と合わせて瘀血または血瘀という言葉も専門的によく使われるようになりました。
瘀血と言うのは病理的な原因によって生じた血流の停滞とそれいともなう一連の症候のことを言うと定義されています。よくある症状としては疼痛、うっ血、潰瘍、炎症性及び化膿性の病変、血栓性静脈炎などや癥瘕(ちょうか)と呼ばれるお腹の中の腫れ物や腫瘤のことを言います。
これらを治す薬剤としては活血薬と呼ばれ、作用の強弱によって弱い順に和血、行血、破血となります。
和血は、全身の機能を調整して血液循環を順調に行わせて瘀血を解消する方法で、作用は穏やかです。
行血は、血管を拡張させることによりうっ血状態を改善させます。(今よく使われている血管拡張剤と作用は重なるところと少し異なることろがあります)
破血は、逐瘀ともいい、血管拡張のほかに抗凝血、分解吸収などによって頑固な瘀血を消散させることです。これが作用としては一番強く激しいもので、出血を伴ったりしますし、妊婦に使うと堕胎につながることもあります。
生薬としては、川芎、丹参、鶏血藤、毛冬青、延胡索、鬱金(川玉金のほう)、姜黃、益母草、桃仁、紅花、三稜、莪朮、牛膝、乳香、没薬、水蛭などがあります。
腫瘍などができた場合にはよくこの破血という薬剤をつかいます。筋腫や良性、悪性の腫瘍に対して行います。また末端の壊死などの状態のときも肉芽を形成させる薬剤や組織に酸素を供給するようなものを使いつつ、古くなっていたんだ組織を切り離すために破血の方法を併用したりします。最近でも糖尿病で末端が壊死した方や尿管の周囲に良性の腫瘍(デスモイド型)ができた方や慢性的な咽の腫れ物のある方がこの方法で改善しているような印象のある方がおられます。
破血という方法は特に弱い毛細血管に対して行うと効果が高いようで、腫瘍が作る新生血管を破壊したり、子宮内膜の増殖時に血管が異常な増殖をするような筋腫などにとても効果があるようです。
このようなときは水蛭のように力のある薬剤が良いようで、これを症状に合わせて負担にならないような量を見極めて使うことが大切です。
ですがうまく行けば腫瘤のところが壊死して取れたり、小さくなったりすることが起こります。
(参考資料:「漢薬の臨床応用」中山医学院編 神戸中医学研究会訳、編 医歯薬出版株式会社)