漢方薬の中には打ち身や捻挫などを起こした時に痛みや腫れを早く引かせたり、傷の治りを早くしてくれる処方がいくつかあります。
つい先日一般薬として一つ商品が販売になりましたのでご紹介を兼ねて書いてみたいと思います。
漢方では打ち身や捻挫、肉離れを起こした時に瘀血(おけつ)という「うっ血状態」ができ、これを早く改善することで傷の直りを促すと考えています。この時の治療を「活血(かっけつ)」と言います。
一般的には湿布薬が使われますが、組織的な損傷は内服によって治りをうながす治療を並行して行ったほうが短期間で治すことができます。
この時の治療はおおむね「下法」という方法がとられます。これは組織的な損傷が起こったところにある「悪いもの」を大便と一緒に体の外に出すという治療法です。
この時に大切なのは「大黄」という生薬で、一般的には瀉下剤という便秘薬として用いられますが、漢方の有名な先生によると「大黄には肝臓に集まった解毒されたものを胆道から排泄することを促す働きがあり、これが打ち身や捻挫によって生じた傷ついた組織を早く体外へ排泄することをたすけている」といわれています。
ですから、打ち身や捻挫、肉離れの漢方薬を服用すると下痢を起こしますし、起こさなければ薬量が足りていないと考えます。服用開始はできれば1日4~5回ぐらい下したほうがよいといわれる先生も見えました。
「下痢をするたびに患部の腫れが引いていって面白かった」と京都の有名な漢方医の先生が随筆に書かれています。
この時の便はふだんとは違うとても臭い便が出てくるとしています。腫れが引いてくると同じ薬を飲んでいても下痢の回数が減ってくるとも言われています。
では代表的な処方を紹介します。
治打撲一方(ちだぼくいっぽう)(市販品 小太郎、健康保険ツムラ89)
打撲や捻挫の代表的な処方です。腫れや痛みがひどく、筋骨の痛みが長く続いているものにも使えます。有名な漢方の先生がこの処方でご自身の骨折を早く直した経験を書かれています。
通導散(つうどうさん)(市販品 ウチダ和漢薬、健康保険ツムラ105ほか)
打撲により皮下出血が広範囲に及び、興奮によってみぞおちのあたりに突き上げる感じがあるときに使う処方です。転落して体を打ったとか追突によって起きたうっ血性の痛みに使われます。
この処方を服用すると黒い便が排泄されるとされています。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)(多数扱いあり)
打撲後の疼痛や腫れがひどく、皮下出血ひどい状態の時に使います。またの付け根(会陰部)を強打して小便が出にくくなったにも使われます。
あとこのようなときの民間療法もいくつか書物に紹介されています。
①菊の花と紅花を合わせて濃く煎じて温湿布をする。
②芭蕉の葉と茎とを合わせて煎じて服用する。
③高い所から落ちて打撲損傷を受けて、仮死状態になったときは小便を飲ませると蘇生すると古い漢方の書籍「千金方」にあるそうです。
あと筋違いや打撲の軽い痛みが長引くときは、田七人参を地竜と一緒にして服用するとよくなることが多いです。