古い書物の雑記的な中に「子宝に恵まれない女性は体に海を作ることができないことがある」と書いてあるのを読んだことがあります。
これは妊娠が始まりおなかに「海」が再現されその中で赤ちゃんがゆったりと40週育まれることを言っています。


海という字に母が入るのはここを語源にしているという説も読んだような気が。


これは中医学的に考えても興味深く、不妊、不育の両方に関係することではないかと考えています。
羊水など子宮内に水が貯えられ、その水の質や循環を妊娠開始と同時にしていくことになります。

この時、体質的に「水」の量や質をうまく調整できる体がないと妊娠がうまくいかないと考えれれます。体の中で主に「水」を調整するのは「腎」となりますから「腎」が弱いと「水」の量や質がうまく調整できないということが起こります。


「水」の状態としては質が良い状態でなくてはいけません。濃すぎても薄すぎてもだめで、栄養的に何かに偏ることはよくないと考えられます。


体の中に海ができるときに「濃さ」「量」の二つが体質や生活習慣で大きく変化すると考えています。


水の質が濃いというのは、塩分の取りすぎや甘いものの取りすぎ、脂肪分の取りすぎなどによって生じてきます。こうなると水が濃くなりネバっぽくなってしまいます。中医学ではこの状態を「痰湿」と呼んでいて、これは不妊や不育の大きな原因の一つと考えられています。
この場合には食事のとりすぎや塩分、糖分、脂肪分の取り方に注意しつつ、漢方薬で痰湿を流れやすい水に変えていく漢方薬を様子を見ながら服用していきます。特にスナック菓子が好きという方に多くみられます。このような方は特に酸っぱいものを積極的にとり、肝の疏泄という働きをしっかりとさせてあげる必要があります。


水の質が薄くなるという方もいます。おおむね「湿家」と呼ばれたりもします。こういう方は皮膚が白く下半身が重く、むくみやすく、貧血の傾向があったりすることもあります。食が細い方もこのタイプの方があります。もともと胃腸から栄養素を消化吸収することがよくない状態になっている方に多く、最近では食事のとり方がよくなくてこれを起こしている方も多く見えます。
また極度のダイエット志向でこうなっている方もあります。特に10代20代で極端なダイエットをして生理が止まってしまったという方に「体の中の海」ができにくくなっている方がかなりの割合で見受けられます。

こういう方は「脾陰」という部分が弱くなっていることが多く、ここをきちんと建て直していくことが大切で、これを行いながら「海」の養分になるようなきちんとした食事をしたり、海に関係するたとえば牡蠣などから作られたサプリ等を使うと改善してきます。


水の量が多くなるというのは体の水はけが割るyくなっている方に多く、腎が弱い、甲状腺の問題、脾の問題、肺の問題というようにいくつかの原因を考えていきます。この問題には日ごろの運動不足や喫煙、塩分の取りすぎなどが「むくみ」を招いて起こっていることもよくあります。
この場合は水を調整する漢方薬を使いながらできる範囲で運動をして改善していく方向に持っていきます。

水の量が少ない、ためれないという方の場合は脾、肺、腎を丈夫にする必要があります。体質的に弱いという方はここを補う漢方薬をしっかりと使って体質を強めてあげる必要があります。食事的にはたんぱく質のと取り方に注意していく必要があります。また漢方的には腎を強くする黒い食べ物(主として海産物や木の実)をしっかりと食べていく必要があります。


年齢が37歳を超えてくると肝腎の働きが少しだけ衰えが目立ってくるので卵子や妊娠して子宮内の環境を良く保つ働きが弱くなったりましす。この時お掃除屋の免疫細胞が妊娠継続を逆に邪魔してきたりすることもあります。

これらの細胞は「水」の流れと非常に関係が深いと考えます。ですから体の中の「海」の状態がよいように保てないともいえるのです。


これを防ぐためには肝腎を丈夫にしつつ、ここに栄養を送り、体全体的な免疫に関係している腸の中の環境を良くしてあげることが大切です。


また、妊娠の継続は任脈、督脈という脈が絡むとされていてこれは「肝」との関連があるのでストレスなどで「肝気」の流れが悪いとやはり妊娠に支障が出ます。これもストレスを解消したり悩みすぎないようにしていくことが大切です。


以上のようなことに注意すれば「体の中の海」をしっかりと作って保つということができるようになります。