本日は店頭での実習がありその中で質問が出た内容から。
がんに関しての漢方薬での対応について。
がんに関しては、がんの種類、部位によって漢方的な対応は異なって考えることが多いのですが、基本的な部分では同じです。
漢方医学の基本的な考え方は「陰陽のバランスを保つ」ということであり、このバランスを保つ上で「がんを症状的に持っている」という状態自体が「陰陽のバランスが崩れているからできた」と考えます。
血液のがんと肉腫以外のがんについては基礎的な陰陽のバランスを取りながら臓器ごとの役割を考えてそれぞれの処方を使うというのが多いようです。
手元にある「実用中医内科学 日本語版」(上海科学技術出版)や「漢方診療医典」(南山堂)、あるいはほかの漢方を実践されていた先生の随筆などを参考させていただきますと次のように考えられています。
がんそのものを考えている場合は臓器ごとに使う処方がもちろん異なっています。肺がん、食道がん、胃がん、膵臓がん、肝臓がん、直腸がん、子宮、卵巣がん、膀胱がんなどがあげられていますが、基本的には「気滞」の解消、「瘀血」の解消、「毒熱」の解消、「痰」の解消が主となり、それに元気を保つように体の状態を持っていくということが中心の処方が並んでいます。
これもそれぞれのがんに対して処方がたくさんあります。また総合的な漢方としてW.T.T.Cというものもあります。
白血病やリンパ腺のがん、乳がんには少し前に話題になった「紫根」という生薬の入った処方が紹介されています。「紫根牡蠣湯」というのが有名な処方になります。これに血府逐瘀丸(冠脈通塞丸)を併用するというのが紹介されていたりします。
キノコ製剤もよく使われており免疫力を上げるものとして、サルノコシカケ、霊芝、アガリクス、メシマコブ、マイタケなどが使われることもありますが、これ単独で使うというよりは上で体質的なことを見極めたうえで、補助的に使うほうがよいようです。
病院での標準的な治療をされている場合、漢方的には「食べること」「排泄すること」「眠れること」「気分がよいこと」を目的にして補助的な治療として行うことが最近では増えています。
外科的な処置を受けられている場合は基本的には気血の損耗を補いつつ体の体力が早く回復する手助けをします。総合的には十全大補湯(補全など)を使いながら状態に合わせたものを使います。
抗がん剤や放射線治療を受けておられる場合は、やはり気血の損耗を防ぎつつ、「食べること」「排泄すること」に注意をしながら漢方薬を使います。特に抗がん剤による吐き気や食欲不振には苦い胃薬が奏功することが多く、熊の胆、鯉の胆などの配合された胃薬や百草丸のようなものがよく効くことがよくあります。
また抗がん剤や放射線治療は腫瘍の周辺に対して「やけど」のような状態をもたらしこれが不快な副作用的反応を起こしていることも多いので、漢方的には涼性で補う、西洋人参を使ったりもよくします。血管炎などにはこの西洋人参に田七人参、丹参などを組み合わせるとしびれや痒みが軽くなることもよくあります。
まだまだ情報はありますのでおいおい質問を受けたときにアップしていきます。